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MH小説⑤この輝きは誰かを守るために…

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いつの間にか5話目ですね(;´∀`)
結構長々書いていますが
まぁ気長に読んでください



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





「傷の具合はどうですか?ぴよさん」

「かなり酷いな・・・特にこの腹の傷・・・
内臓には達していないようだが出血は止まっていない
早く傷を塞がないと危険だな」

「で、でも縫うような道具なんて持ってきてないでしょ?」


るりとまるは相変わらずラージャンに近づけないでいるので
左官とぴよでラージャンの傷を確認していた

腹部の裂傷が一番酷く、未だ出血が止まっていない
一刻も早く傷を塞がないと間違いなく命に係わる
どうしようか考えている間にもラージャンは少しづつ衰弱していく

真夜もとても心配そうにラージャンに寄り添い続けていた


「・・・仕方ない。焼いて塞ごう!」

「「・・・え!?焼く!!??」」


ぴよは剥ぎ取りナイフを取り出すと
明かりのために灯していた松明に剥ぎ取りナイフを
かざし刃を熱し始めた


「ぴ・・・ぴよさん、いくらなんでもそれは・・・
せめて麻酔薬を使ってあげたらどう?」

「誰も持っていないだろう?調合する材料探しに行く時間はない
これしか手はない。急がないと・・・もし傷口から
細菌が入って感染症でも引き起こしたらもう手遅れになる
真夜、ラージャンにかなり傷むが動かないように言ってくれ」

「う・・・うん、分かった」


真夜はラージャンにそのことを伝えた
小さく首を動かし、返答をしたようだがとても弱々しい
出血のせいで体温も低く、意識も混濁しているようだ

十分に刃を熱するとぴよはその熱した刃を傷口に当てた
あまりの激痛に声を上げ、暴れようとするラージャン

が、「動かないように」そう言われたのを思い出したのか
暴れるのを止め、痛みに耐えようと歯を食いしばっる

それを見た左官がラージャンの正面に回り座った
るりが「危ないよ」と声をかけるが首を横に振った



左官はラージャンの顔に手を添える


「真夜を指導してくださってありがとうございます
かなりの痛みですが傷の治療のためにもうしばらく辛抱してください」


その言葉にかすかに頷いた
意味は恐らく分かっていないだろう
それでも自分を気遣ってくれている
そのことだけは理解出来ていた





数分ほどで傷を塞ぐことはできた
他にも裂傷は見られるが腹部ほど酷くはない
わざわざ痛みを与えて塞ぐほどではなさそうだ


「るりさん薬草とアオキノコ、ハチミツ使って即席の傷薬作ってくれ」

「回復薬グレート作ればいいの?」

「ああ、ただし傷に塗る用だから薬草大目にな」

「分かった、ドロっとした感じに作ればいいのね」


るりは出来た傷薬をぴよに手渡したがちょっと引け腰気味だった
まだラージャンを怖がっている様子
ラージャンは完全に気を失っているようだが、やはり怖いようだ


「真夜、出来ることはやったぞ。後はラージャン次第だ」

「どういう意味なの?」

「彼が生きる気力を失っていなければ元気になるということです
これだけの大怪我ですし、彼の生きたいという意思も必要になります」


一旦左官達はバルバレに戻ることにした
治療のための道具などほとんど持ってきていなかったし
必要な物をそろえてからここに来ることにしたのだ

真夜に戻ってくるまでの間ラージャンを見ているように言うと
足早に左官達はラージャンの巣穴から離れた






夜が明け、朝になった

真夜はずっと彼の傍を片時も離れずにいると
「俺の事などほおっておけ」そう小さくラージャンが呟く


「気が付いた?剛雷さん」

「・・・どうして助けた・・・人間まで連れて来て・・・」

「え?・・・だって剛雷さんが死んじゃうと思って・・・
でも真夜じゃ治療とかできないから左官達にって・・・」


しばらく沈黙が流れた・・・
少し考え込むとラージャンはようやく口を開ける


「俺はお前が思っているようなヤツじゃない
本当に出来損ないで・・・今日まで生きられたのが不思議なくらい」

「・・・刃の者が言っていた親に捨てられたって・・・本当?」


あれからずっと気になっていたことを真夜は尋ねた
子供を捨てるなど守の者ではありえないことだが
ラージャンは静かに「本当のことだ」と頷いた


「物心ついた頃から親は俺に冷たかった
傍に寄らせてくれたこともないし、会話もほとんどなかった
ある時に川に連れていかれて・・・何かするのかと思ったら
鷲掴みにされてそのまま川に投げ捨てられた・・・」

「・・・え?」






置いていかないで・・・


そう何度も叫んだが、何事もなかったかのように親は立ち去った
死に物狂いでなんとか川から這い上がったが
自分は捨てられたのだと理解するまでに時間はかからなかった



狩りの仕方も身を守る術も知らない幼子・・・



夜になると物陰に隠れ、怯えながら朝が来るのを待つ
安心して眠ったことなど今まで一度もない

空腹になっても狩りの仕方が分からないから
自分で食料の確保も出来なかったので
他のモンスターの食べ残しをあさった

それさえなくあまりの空腹に耐えかねて
本来は食べない草や・・・時には木もかじった
どんなものが毒なのかも知らなかったから
誤って毒キノコを食べて3日3晩苦しんだこともある

狩りも他のモンスターのやり方を見て見様見真似で覚えたから
これが正しい方法なのかも知らない・・・


何でこんなに必死になって生きてきたのか自分でも分からなかった
いっそあの時溺れ死んでいたほうが楽だったろうに


「実を言うと刃の者と戦って深手を負って、これでやっと死ねるかな?
そう考えていたんだ。お前が来るまでは・・・・
体が無駄に丈夫だから滅多なことでは致命傷にならんし」

「・・・真夜がしたこと・・・余計なことだった?」


真夜が寂しそうな表情をすると
「俺が勝手にそう考えただけだ」と答えた

こんな自分が素直な気性の真夜を指導していいのか?
そう何度も思ったけど、本当は傍にいてくれたことは嬉しかった
それと同時にとてもうらやましいと感じていたことも・・・


「いいな、お前は・・・大切にされていて・・・
親にも愛されていて・・・俺も守の者に生まれていれば
少なくとも捨てられることなんてなかっただろうに・・・」

「剛雷さん・・・・?」


なんだか様子がおかしい
体に触れてみるととても熱かった
どうやら傷のせいで熱があるらしい

恐らく熱が出るだろうと予測していたぴよは
もしそうなったら水を飲ませてあげてくれと
真夜に指示を出していた

だから真夜は水を飲ませようとしたのだが
彼はうけつけようとしなかった

飲んでとどんなに頼んでも首を振るばかり


「俺にことはもういいから・・・真夜は人間のところへお帰り・・・」


ラージャンが初めて真夜の名前を口にした
それに驚きつつも彼の生気を感じない口調に
真夜は焦り始めていた・・・




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


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