海守は蛇王のこと嫌いです
でも同じくらい長生きしている者もいない
複雑……w
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
千姫の問いかけから怒りが再熱してしまった海守だが、
どうやら今までの鬱憤も爆発してしまったらしく、ずっと蛇王への愚痴を言い続けた
普段そんなことを言える相手がいないので尚更だ
左官達には何を言っているのかさっぱり分からなかったが、
真夜達は海守の愚痴に相づちを打ち続けていた
『あー……すっきりした。悪かったな、こんなこと聞かせてしまって』
『いいや、あんなことされれば誰だって怒るさ。
……よほど不満が溜まっていたみたいだね』
10分ほど愚痴を言い続けていて海守はようやく落ち着いたようだ
恐る恐るぴよは真夜にさっきまで海守が言っていたことを聞いてみた
「真夜…海守は一体何を怒っていたんだ?」
「うんとね、蛇王はね今までも海守を起こすために海に隕石落としたり…
ワザと海に向かって(しかも海守が眠っている場所目がけて)ブレス吐いたり、
あの長い体を使って大津波まで起こしたこともあるみたいだよ」
「海守を起こすためにそこまでするの!?
長大なる者って相当暇をもてあましてるわね…」
そりゃ誰だって怒るわ、と全員一致で思った
落ち着きを取り戻し海守はハッと思い出したように話の続きを言い始めた
『まぁさっきも言ったように獅優が完全に地守として力が覚醒するまで
かなり時間がかかるから、その間私は休眠せずに起きててやろう』
「本当に!?……というかいいのか?」
『こうなった以上放っておけんからな。まだまだ教えることも
沢山あることだし……本来は地守が教えることだがな』
「地守は心を失っていたので仕方がありません。
しかし一体何故心を失ったのか私達には……」
『それは私も調べたが分からなかった。元々先代の地守から
少し意志が弱いところがあると言われていたからな、
それが何かしら影響を与えたのかもしれないな……』
そこは結局最後まで謎になりそうだ
海守は長大なる者に無理矢理起こされても
特に異常はなかったから余計謎だった
『考えてもそうなってしまったからには仕方ないさ。
関わった以上、私が獅優の面倒をみてやるよ』
「はい、わざわざありがとうございます」
『じゃあ私はそろそろお暇させていただかせてもらうぞ。
ずっと陸上にいるのは体が重たくてならんわ。
獅優が起きたら私はこの辺りの海にいると伝えてくれ。
まぁ目覚めさえすれば互いにどこにいるかは大体分かるけどな』
「そうなの?似たような力だから?」
『さぁ知らん。分かるから分かるとしか言えん。
似たような力だからというのはあるかもしれんが
操る力は違うからな。だからあまりお互いが近付きすぎると
力が反発しあい天変地異を招いてしまうんだよ』
「なんだって!?」
クロムと千姫はそのことを聞いた瞬間”あの時”の謎が解けた
自分達が地守と戦っているとき海守は海でずっと動かなかったことに
気付いていたのだが、それは動かなかったのではなく動けなかったのだと
『私が調べ物を終え、この場所に一番近い海に来たとき
地守はすでに極炎の力を発動させていた。その状態の地守に近付くには
私もこの力を発動させなければ不可能だったのだが、そうすれば
お前達は間違いなく無事では済まなかっただろう。
普通に接触する時でも力を最小限に抑えなければならんからな。
私達が必要時以外眠っている理由もここにある』
「そうだったんだ。力が強すぎるのも大変なのね」
ああ、全くな、 と少し困った感じの顔で海守は笑っていた
でももう慣れっこな様子も感じられた
それだけ長い間生きているのだろう
人間や他の種族も想像出来ないほど長い間……
『それじゃあな。獅優は多分一週間くらい眠ったままだろうけど
そのうち目を覚ますから、自然に目を覚ますまでそっとしておいてくれ』
「はい、分かりました」
『初めての私の後輩だ。いじめたりしたら許さないからな』
『獅優をいじめるヤツは真夜も許さないから大丈夫だよ!海守』
『ふふふ、頼もしいヤツだな。それでは任せておくよ』
『ありがとう!』
大きな体をゆっくり動かすと海守は大海へ戻っていった
かなりのスピードで泳いでるのかあっという間に姿が見えなくなった
「るりさん、獅優の様子はどうですか?」
ずっと獅優に付き添っていたるりに左官が尋ねた
獅優は深く眠りついていてやはり起きる気配がない
早く古代林にある獅優の巣穴に連れて行きたいところなのだが…
『仕方ない、妾≪わたし≫連れて行くよ。
クロムは真夜とメディオを頼む』
『おお、分かった。でも怪我してるのに大丈夫か?』
『これくらい問題ないよ』
「頼むよー千姫」
千姫は獅優の体に自分の爪が食い込まないように
優しく掴むと獅優に負担がかからないようにゆっくり飛び上がった
クロムが背に真夜とメディオを乗せ、それに続く
「じゃあねー皆ー!」
「すぐに会いに行くよー待っててねー」
真夜達を見送ると、全員後ろを向いた
そこには息絶えたガリア・ケドゥクスが横たわっていた
「どうする?いつもなら剥ぎ取るのだけど…」
「いえ、今回は剥ぎ取らずに誰も手を出せないように
埋めてあげましょう。心を失っても戦い抜いたかつての地守を…」
「あたしもそれに賛成や、このままの姿で眠らせてあげたい」
「俺もマチコの意見に同意」
「じゃあ……そうしよう…・・」
左官達はガリア・ケドゥクスを埋めてあげることにした
なるべく深く、誰も手を出せないように
その様子を遠くから海守が見ていた
『ふ……面白い奴らだな。だが、あのような人間も中々おるまい。
獅優もああいう奴らと関われたから良かったのだろうな』
継承の様子から察するに、きっと獅優は先代を超える力を持つ
そう確信しながら海守は更に深い海底へ身を潜めた
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇