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【ポケモン小説】―蒼紅の英雄― 第6話~ヒラガ文字~

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なぜ前回、カエンジシが「破壊光線」使ったかというと…

ポケモン超不思議のダンジョンをやっているときの依頼で

「よーし、やるぞー!」

と意気込んだ瞬間にカエンジシに破壊光線ぶっぱされた思い出があるからです

(かなりトラウマ)

 

◇◆◇

 

 

「……ル…ウィル。 起きられるか? ウィル」

 

「うー…ん、待って下さい団長…昨日の残りの書類がまだ…」

 

「…完全に寝ぼけてるなこれ。起きろって、最終フロアに着いたから。」

 

「……え?」

 

誰かの声が聞こえて目を覚ますと灰色の毛が目に映りました。

そして次に見えたのが紫色の瞳。

あれ? わ、私今どんな状況なんですか?

えーと、確か霧の山脈を攻略しようとして、疲労で動きが鈍ったところを破壊光線で攻撃されて、足を大怪我してしまってそれから……そう、ゼフィラとノワルーナが助けてくれたんです。

それで私は足を怪我して動けないからゼフィラが私を背負って…

 

「あ…えっ、はい!? もしかして私眠って……。」

 

「そうだよ。やっと目が覚めたみたいだな。」

 

ようやく完全に意識が覚醒しました。

なんたること、応急処置をして貰っただけではなく、背中で眠ってしまったなんて…

あまりの恥ずかしさに一気に赤面します。

 

「も、申し訳ありません! ただでさえご迷惑を御掛けてしているのにこんな…」

 

「寝てて良いって言ったのは俺だ。謝る必要はない。」

 

ゼフィラが全く気にする様子もない感じで話しかけてきます。

なんでこんなに優しいんですか、悪タイプには一切思えません。

例外は勿論ありますけど大体悪タイプってちょっと意地悪っぽいところがあったりするのに…。

これ以上好きになるつもりないのにどうしましょう。

 

「しかし随分疲れていたみたいだな。爆音とか響いていたのに全く起きねぇし、霧の中をずっと波導を頼りに動いていたせいか?」

 

「はい。やはり濃霧の中では目は役に立ちませんし。ゼフィラは聴覚を頼りにしているんでしたよね?」

 

「ああ、そうだよ。にしては疲れすぎじゃないか? 一応訊いておくけど波導で感知する範囲っていつもどれくらいにしているんだ?」

 

「いつもですか? フロア全部ですけど。」

 

「……は?」

 

私の発言を聞いたゼフィラが呆れたような声を出しました。

私何か変なこと言いましたっけ?

しかしその次に言われたことは想像出来ないものでした。

 

「お前、馬鹿だろ。」

 

「ばっ…!?」

 

あまりに急に言われた言葉に開いた口が塞がりません。

ば…馬鹿ぁ!?

え? な、なんでそんなこと言うんですか、こっちは必死なのに!

 

「お前1フロアがどれくらいの広さか分かってるのか? いくら波導の扱いに優れていてもそんな広い範囲ずっと波導で探っていたら疲れるに決まってるだろ! ただでさえどれくらい階層があるダンジョンか分からないのにそれは自殺行為だ。」

 

ゼフィラが言っていることは分かります。

確かにいつも疲弊してしまうのは広いフロアを全て波導で探ろうとしているためです。

 

「ですが、このダンジョンは常に濃霧で覆われています。視界もほぼ零と言っても過言ではありません。そんな場所だから波導で広い範囲を探ろうとするのは当然ではありませんか! 敵ポケモンだっていつ襲ってくるか分からないのに」

 

「だからそれが無駄なんだよ。」

 

ゼフィラ、私の主張を一刀両断である。

思わず「どこが無駄だというのですか?」と怒りを込めた口調で言ってしまいました。

しかしそんな怒気を含んだ声にもゼフィラは全く怯みません。

 

「ダンジョンに同じ地形はない。ある程度予想は出来るけど階段の位置だって違う。そんな場所を1フロアごとに全てを感知しようとするのが無駄な労力だと言っているんだ。道具を使うならまだ分かるけど、それに一切頼らず自分の力だけで攻略しようとしているんだろ? なら体力を温存させるために感知するのは精々自分の周り半径4マスか、どんなに広くても10マスくらいで十分だ。」

 

「で、でもここのダンジョンは霧で…」

 

「濃霧で視界が悪いっていうのはここにいる全てのポケモンに共通する条件だ。敵ポケモンだって俺達のこと直前にならないと気付かないヤツが多い。確かに先にこちらが気付けば先手攻撃を仕掛けることが出来て有利に立ち回れる。が、『じごくみみ』って敵ポケモンの位置が分かるラピス付けてると分かるけど敵ポケモンの動きは予想するのが難しい。俺でもどこに行くのか分からないことがあるしな。だからさっき言った範囲に入ったら攻撃するで問題ないだろう。」

 

ほとんど言い返せないまま撃沈しました。

でも言われてみれば確かにそうです。

むしろ今まで何故気が付かなかったのでしょうか。

私はなんて無駄なことをしていたか…。

これではいつまで経っても攻略出来るハズがありません。

 

「そう…ですね。ゼフィラの言う通りです。私が間違っていました、申し…訳あ、り…ません。」

 

自分が不甲斐なくて悔しい。

まだまだ未熟なのだと改めて気付かされました。

最近賞賛ばかりされていて浮かれていたのかもしれません。

でもそんなのただの言い訳だ。

もっと柔軟な思考を持って、何故攻略に失敗するのかよく考えればゼフィラに言われたことだってとっくに気付いただろうに。

全く学習もせず同じ失敗繰り返すのはただの愚か者だ。

 

「ゼフィラ、いくら調査団のメンバーでも女の子泣かせたら駄目だよ。」

 

「そ、そうだな。悪いウィル」

 

「へ?」

 

泣いている? って誰が?

そう思って頬に手をやると濡れていました。

自分でも気が付かないうちに涙を流していたようです。

慌てて目を擦って止めようとしたのですが、止めようとすると更に涙が溢れてきて駄目でした。

それどころか更に酷くなってしまい、ついには声を出して大泣きしてしまったのです。

ゼフィラが明らかに困っているのに自分ではどうすることも出来なくなってしまいました。

 

 

 

 

「…本当に悪かった。ちょっと言い過ぎたようだな。」

 

「ち…違うんです、これは自分が、情けなくて…」

 

どうしよう。困らせたくないのに自分の感情が制御出来ない。

するとゼフィラが私を抱えていない右手を伸ばして私の頭を優しく撫でました。

 

「まぁ…俺も悪かったし、落ち着くまで泣いてていいから…」

 

「ご…め、んな、さい…」

 

ゼフィラにそう言われて安心してしまい、それからしばらく泣き続けてしまいました。

ひとしきり泣いてやっと落ち着いたのは5分ほど経った頃。

こんなに泣いたのは体の弱い母が重い病にかかったと父から連絡があった時以来でしょうか。

 

「落ち着いた? 全くゼフィラも容赦ないから。」

 

「だから悪かったって言っただろ。」

 

「いえ、ゼフィラは私のことを案じて叱って下さったのです。それに別にゼフィラが怖かったのではなく、自分が不甲斐なくて…」

 

「ゼフィラが怖いのは初対面のポケモン全員が思うことだよ。仏頂面だからね。」

 

「ノワルーナ…」

 

「睨まないでよ、本当の事じゃんか」

 

そんな二人のやり取りを見て思わず私は「ふふっ」と笑ってしまいました。

それを見たゼフィラとノワルーナはもう大丈夫だと確信したのか、止まっていた最終フロアの調査を開始しました。

勿論私も参加します。

動くことは出来ませんが、眠ったお陰で疲労もある程度なくなっていますし、フロアの僅かな変化も逃さないように丹念に波導を読んで辺りを探ります。

すると、霧で肉眼では分かりにくいですが、住居があったような痕跡が見受けられました。

どれも壊れていますが石を積んで作られた壁や、暖炉のようなものまで…。

かなり古いですが、誰かがここに住んでいたことは間違いないようです。

 

「一体ここで何があったのでしょうか? 自然に崩れた…というよりは大きな力で壊されたような感じですけど…」

 

「そうだな。これは久しぶりの当たりかな。」

 

当たり? 当たりとはどういうことでしょうか。

そのことをゼフィラに聞こうとした時、奥の方を調査していたノワルーナが足早に戻ってきました。

 

「ゼフィラ来て! ヒラガ文字を見つけた!」

 

「よし、分かった。行くぞ。」

 

「え!?」

 

こんなところにヒラガ文字!?

と、いうことはこの住居の痕跡は1000年前のものということでしょうか。

ノワルーナに案内され、着いた先にはまたしても壊れた壁の一部があり、それには確かにヒラガ文字が書かれていました。

1000年前のものだから、ところどころ掠れていますがなんとか読めそうです。

ヒラガ文字はまだ参考書がないとまともに解読が出来ませんが、とりあえず私が読めるところは…。

 

 

 

ここに※げてきて※※になる。

※のところはここに※れていることに※※かれてはいない。

でも※※の※※だ。この※くの※※に※んでいた※と※※が※れなくなってしまった。

※※※の※※に※げるしかないのか?

しかしあの※※から※げ※れる※※はない。

せめて※※だけでも※※してくれないか※※するしかないのだろうか。

けどあの※※※※※は※※に※※を※さない

 

 

 

「(うぅ…やっぱり参考書がないと難しいところは分からない。もっとちゃんと解読出来るようになりたいです。)」

 

参考書はノワルーナが持っている私のバッグの中にあります。

なのでノワルーナに参考書を取って貰おうと声を掛けようとした時でした。

 

「なんて書いてあるの?」

 

「ここの文が、『ここに逃げてきて半年になる。今のところはここに隠れていることに気付かれてはいない。』 って書いてあるな。それでこの次が…。」

 

「はい!?」

 

一瞬頭が真っ白になりました。

目の前で起こっていることが理解出来なかったからです。

でも…もしかしなくてもこれは…!

 

「ぜ、ゼフィラ…ヒラガ文字…読めるんですか!?」

 

「読めるけど、それがどうかしたか?」

 

「どうかしたか? ではありません! エンシェント調査団にいるメンバーだってヒラガ文字をまともに読めるポケモンいないんですよ! 皆参考書持って一文解読するだけでも数日かかることだってあるのにあんなにスラスラ読めるなんて…」

 

まさに衝撃の一言です。

一番のキャリアがあるカネレ団長でも無理なのに、こんなにあっさりと…。

驚きのあまりそれ以上声が出ず、まるで陸に打ち上げられたコイキングのように口をパクパクさせるしかありませんでした。

 

「ゼフィラ、ウィルが驚くのも無理ないよ。僕だってヒラガ文字勉強してるけど本当に簡単なところしか読めないもん。」

 

「ヒラガ文字は難しいからな。それは仕方ない。」

 

「は…はぁ…そうですけど…はい…。」

 

最早茫然自失に近い状態です。

頭がクラクラしてきました。

ショックが大きいですけど、ここは冷静になってゼフィラに解読を任せるしかありません。

 

「え、っと…ゼフィラ、他の文も解読をお願いしてもいいですか?」

 

「ああ、いいよ。じゃあ次の文から 『でも時間の問題だ。この近くの洞窟に住んでいた皆と連絡が取れなくなってしまった。最早別の場所に逃げるしかないのか? しかしあのせ…』……う~ん…」

 

「どうしましたか?」

 

スラスラと読んでいたゼフィラの声が淀みました。

一体どうしたのでしょう?

何かを考えているようですが…。

 

「…すまないウィル。分からないところがあるからそこは飛ばすけどいいか?」

 

「あ、はい。構いません。」

 

ヒラガ文字は本当に難しいですからね。文字一つで複数の意味を持つこともあります。

あれほどスラスラ読めるゼフィラでも読めない部分があるのは仕方ないことです。

 

「えーと、続きが…『しかしあの……から逃げ切れる自信はない。せめて子供だけでも見逃してくれないか交渉するしかないのだろうか。けどあの……は絶対に我々を逃(のが)さない。』 …とこれでここに書いてあるのは全文だ。」

 

「凄いですゼフィラ!」

 

本当にほぼ解読してしまいました。

調査団でこれほどの文を全部解読しようとしたら恐らく2週間はかかってしまうと思います。

それをこの短時間で…凄いとしか言いようがありません!

 

…それにしても気になる文章ですね。

『逃げてきた』 『隠れていることに気付かれてはいない』 『時間の問題』 『皆と連絡が取れなくなってしまった』 『子供だけでも見逃してくれないか』

今聞いただけでもこれだけ頭を傾げる文面が存在している。

何かから逃げてきた、そして隠れていて気付かれたら何者かにやられるということでしょうか?

一体何から逃げて隠れていたのでしょう。

そしてここの壊された痕跡から察するに”それ”に見つかってしまい、そしてやられてしまった…?

 

「どういうことなんでしょうか?」

 

「……さぁな、俺には分からない。ヒラガ文字はこれで全部か?」

 

「僕が見つけたのはこれだけだよ。他にももしかしたらあるかもしれないけど。」

 

「もう少し探しますか? もしそうなら協力しますよ。」

 

「いや、いい。俺が求める情報はないと思う。それに夜になる前にウィルを調査団まで送り届けたいからな。もう脱出しよう。」

 

「了解!」

 

「分かりました。」

 

ということで霧の山脈から脱出することになりました。

この時私は知らなかった。

ゼフィラが読めずに飛ばしたあの部分…。

ヒラガ文字が読めなかったのではなく私に教えられないことが書かれていただけだったことを…。

 

 

◇◆◇

 

 

 

※おまけ※

描いたのはいいけど当初考えていた構想じゃなくなってしまい、使用できなかったイラストです。

 

 

 

 

 

 

仕事の都合上すぐには直せませんが、誤字脱字がありましたらご報告お願いします。

 

 


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