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?????の視点~竜帝の伝説番外編③~

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正直に言おう。

忘れてました。

後、私の漫画読んでくれている読者の皆様は察しがいいので、話が続くと「バレるよなー」とか思っていたのもありますw

 

 

◇◆◇◆

神の力の欠片を持つものは珍しいが、いるにはいる存在だ。
要因は様々だが、何かしらきっかけがあり神の力の欠片をその身に宿すことがある。

だが、普通はそこで終わりだ。

大抵のものは自分が神の力の片鱗を持っていることさえ気付かないまま、その一生を終える。

神の力の欠片を発芽させ、神へと至る進化、"神化"を成せるものなどほとんどいない。

神化できなくても神に近い力を得るものもいるが、それさえも極稀だ。

そんな極稀な存在が今目の前にいる。

この世界では神の力の欠片を持ち、それを発芽させたものがどういう位置にいる存在なのかは分からんが、このケルベロモンと名乗ったものは間違いなく欠片を発芽させた存在だ。

しかし、ケルベロモンの体内に宿る神の力の欠片はとても小さいらしい。

欠片というか粒みたいなものだな。

だから発芽はしているが、神化はできまい。

せいぜい神の力の極々一部を行使できる程度だろう。

体が未熟だからかまだ表面化していないが、我のことを認識できるのはその力のせいかもしれんな。

 

「……」

 

「? どうしたのだ?」

 

突然ケルベロモンの足が止まった。

何やら苦悶の表情を浮かべている。

何か問題が起こったのか?

それとも言葉が通じるようにするため、我と魂を繋げたことで悪影響でも出てしまったか?

 

「……いえ、ここから先は時空嵐≪エターナルストーム≫が発生した中心部で、"ロイヤルナイツ"が立ち入りを禁じている場所なんです」

 

ああ、なるほどな。

先程ケルベロモンは"ロイヤルナイツ"はデジタルワールドの秩序を守る存在だと言っていたし、"ロイヤルナイツ"が出した命令に逆らうことができんのだろう。

 

「時空の裂け目……ありますか?」

 

「うむ……」

 

このもののことを考えていて時空の裂け目を探すことを失念していた。

あまりこのお人好しに迷惑をかけるわけにはいかん。

神の力の欠片を発芽させたものの未来を奪うことなど、たとえ闇と混沌を司る神だった我もしたくない。

目をこらし、辺りを探る。

 

「あ……あったぞ! あれだ!」

 

ようやく時空の裂け目を見つけることができた。

できたはいいのだが、場所が問題だった。

明らかに立ち入り禁止の場所である。

 

「どこですか?」

 

「う……うぬ……」

 

い、言い辛い……。

でも他の場所に時空の裂け目は見当たらない。

あそこしかなさそうだ。

 

「あの……真っ二つに折れた大きな木が見えるか? あそこにある」

 

そこは立ち入り禁止の地帯に2キロほど入った場所。

魂が繋がっているからケルベロモンが困っているのが伝わってくる。

なんであそこにしかなんだよ。

もうちょっと別の場所にあってもいいだろう!

 

「……」

 

「……ケルベロモンよ。我を捨てていけ。ここまでして貰っただけでも十分だ」

 

闇と混沌を司る神であった我。

罪人に永遠の苦しみを与える役割も持っていた。

だから信仰はされていたが、我を気遣うものなどいなかった。

優しい言葉などかけられたことは一度も無い。

いつも遠巻きに見られ、恐れられていた。

人間にも、他の神にも……。

最後に優しくして貰っただけでも我は嬉しい。

 

「……」

 

「ケルベロモン?」

 

ケルベロモンは動かなかった。

何かを考えているらしいが、いくら魂が繋がっていても何を考えているかまでは分からない。

苦悩しているのであれば、無用の長物だ。

其方がいなければ我はとうに死んでいた身なのだから。

 

「ケルベロモン……」

 

「黒蛇さん、全速力で走るので私の体にしっかり掴まっていて下さい! 必要なら噛み付いてもかまいませんから!」

 

「へ!?」

 

ケルベロモンはその言葉通り、猛スピードで走り出した。

全速力で向かうのは勿論、時空の裂け目のある場所だ。

かなりの速度で我もケルベロモンの言葉に従い、ケルベロモンの体にしがみつくことしかできない。

声を発せられない。

だが魂が繋がっていることが幸いし、テレパシーは伝えられる。

 

『ケルベロモンよ。いいと言ったのに……秩序を守る存在に逆らえば其方がどうなるか……』

 

「黒蛇さんを見捨てることなんてできません! 少しでも助けたいという気持ちがあるなら全力で助けるのだ、と私は尊敬するデジモンに言われました! だから最後まで貴方を助けます!」

 

強い意志を宿すその言葉。

あまりにも強い意志に我は何も言えなくなった。

なんと心が強いものなのだろう。

我には絶対にできない。

というか……黒蛇さん?

ケルベロモンには我はどんな姿で見えているんだ?

 

『ケルベロモン。その……一応訊くが、其方には我はどんな形に見えているのだ?』

 

「そうですね。黒くてずんぐりしている小さな蛇です」

 

く、黒くてずんぐりしている小さな蛇!?

太陽さえ喰らう大蛇と恐れられた我がそんな姿になっているのか!?

間違いなく免疫システムに攻撃を受けているからだろう。

しかも「黒蛇"さん"」と呼ばれたことから察するに、絶対怖い姿じゃなくて可愛い姿だし。

なんか……悲しい。

我がそんな姿になっているなどと、元の世界の神なんかに知られたら恥ずかしくて死にそうだ……。

は!? いや、今はそんなことはいい!

後ろからケルベロモンより早い速度で何かが近付いて来ているのだ。

視線をそちらへ向けると、白い体に獣のような前足、鋭い爪のある後脚、鷲の翼を持つ生き物がいた。

 

「ヒポグリフォモン……よりによって速いデジモンがいるなんて」

 

『ヒポグリフォモン?』

 

「先程話した"ロイヤルナイツ"の配下です。不味いな。私の脚ではたどり着く前に追いつかれる」

 

ケルベロモンが焦っている。

実際もう目前に迫っているし、このままではケルベロモンは捕まり、罰を受ける羽目になるかもしれん。

それだけは絶対にさせるか!

今の我の状態では大した力は使えんが、目眩ましくらいならできるだろう。

体にかなりの負荷がかかってしまうが、次元の狭間に戻ればすぐに修復できる。

一応これでも不死の存在だからな。

元神の意地を見せるのだ。

神の力の一部を発動!

空間をねじ曲げて、我とケルベロモンの姿を隠す。

 

「……キュイ?」

 

「あれ?」

 

上手くいった! ヒポグリフォモンとやらは我らを見失ったようだ。

効果はほんの数分といったところだが。

しかし無理に力を使ったため酷い目眩がする。

気持ち悪い……。

 

「!? 黒蛇さん大丈夫ですか!?」

 

『し……心配無用だ。それよりも早く時空の裂け目に……』

 

「分かりました」

 

く、苦しい……。

目眩だけじゃなく、体を喰われているかのような激痛まで走る。

一刻も早く次元の狭間に戻らなければ体が崩壊する。

我の体の異常を感じ取ったのか、ケルベロモンの走るスピードが更に上がった。

息がかなり上がっている。

ケルベロモンも相当苦しいハズなのに、それでも脚を止めることなく走り続ける。

彼の行いを無駄にはしたくない。

我の体よ、なんとか持ってくれ……。

 

「いたぞ! あそこだ!」

 

「くっ!」

 

ここでとうとう目眩ましの効果が切れた。

ヤバい、ヒポグリフォモンだけじゃなく、他のデジモンとかいう存在までいる。

するとケルベロモンは身を翻してヒポグリフォモン達に飛びかかった。

 

「お叱りは後で受けます。【ヘルファイアー】!」

 

ケルベロモンがヒポグリフォモン達へ向けて炎を放った。

なるべく炎が広範囲に広がるように首を左右へ大きく振る。

炎が広がったのを確認すると、ケルベロモンは再び走り出した。

説明しようとは考えないのか。

いや、そんなことをしていたら我が死ぬのは確実だが……。

ケルベロモンもそれがなんとなく分かっているから、時間を稼ぐ方法をとったのだろう。

本当に迷いが無いな。

こんなことができるものなど早々おるまい。

しかしケルベロモンがとった時間稼ぎも所詮は一時しのぎ。

すぐに炎が振り払われた。

ケルベロモンを捕らえようと、5体のデジモンが襲いかかろうとしている。

 

「……もうちょっとなのに……」

 

もう時空の裂け目は目前だ。

距離にして200mくらいだろう。

 

『ケルベロモンよ。我を時空の裂け目へ投げ込め。其方の力なら可能だろう』

 

「え!?」

 

全力疾走で疲れ切っているケルベロモンに無理を頼むことになるのだが、残り200mを走るよりは絶対このほうが早い。

 

「……分かりました。思いっきり投げますよ」

 

ケルベロモンはすぐに了承してくれた。

背中に乗せていた我を口に咥える。

 

『もう魂の繋がりは切る。言葉は通じなくなるから、その前にこれだけは言わせて貰おう』

 

我はケルベロモンの目を見る。

強い信念を持つ、優しい目。

こんな目で見られる日が来るとは思わなかったな。

 

『本当に……助かった。ありがとう。この恩は絶対に忘れぬ』

 

時空嵐に巻き込まれたことは不幸な出来事であったが、こんなものに会うとは思わなかった。

いつも恐れられていた我を助けてくれた、其方は命の恩人だ。

 

「気にしないで下さい。それでは投げますよ。お元気で!」

 

『ああ、其方もな』

 

ケルベロモンは持てる渾身の力を使い、我を投げ飛ばした。

その途中、5体のデジモンがケルベロモンに襲いかかっているのが目に入った。

目に入った瞬間、我は裂け目に入り、次元の狭間に戻った。

バキバキと体から音が鳴り、元の大きさに戻り始める。

システムの攻撃を受けて負傷していた部分も修復され、我はあっという間に力を取り戻した。

時空の裂け目はそのままになっている。

今なら我はデジタルワールドに干渉できる。

我の力がデジタルワールドの住人に効くのはさっきので判明しているからな。

さっさと使うぞ。ケルベロモンを助けるのだ!

ケルベロモンへ攻撃しているものへ呪いの邪眼を発動。

『お前達は何も見なかった』

『立ち入り禁止区域に入ったものなど誰もいない』

そう記憶を弄り、改竄していく。

記憶を改竄されたものは我の邪眼の力に堪えきれず気絶していった。

死にはしないだろうが、神の力で記憶を改竄されたんだ。

ケルベロモンと同じく体が未熟なようだし、それは堪えられんわな。

攻撃していたデジモンが急に倒れたので、ケルベロモンは驚いているようだ。

まだまだ続くぞ。

今度はケルベロモンに術式をかける。

転移魔法だ。

ケルベロモンを我と初めて会った場所へ転移させる。

これでケルベロモンが罰を受けることはない。

そして転移魔法が発動する、その瞬間だった。

 

「××××?」

 

ケルベロモンがこちらを見た。

まさか……そんなことあるハズがない。

我は次元の狭間にいるのだ。

いくらケルベロモンが神の力の欠片を持っていても、次元の狭間にいる我を見ることなどできないハズ。

しかしケルベロモンの視線はしっかりと我へと向けられている。

 

「××××××××××」

 

そして我へ声をかけてきた。

魂の繋がりはもう途切れている。

だから何を言っているのかは分からない。

分からないハズなのに……「ありがとうございます」と言っているように聞こえた。

ケルベロモンが我に微笑みかけたその時、転移魔法が発動しケルベロモンはその場から消えた。

 

唖然とするしかなかった。

礼を言うのは我の方だというのに。

なんだろう、恩を返せた気がしない。

それ以上のものをケルベロモンから貰ったから……。

時間にしたら10分にも満たないのに、なんだか心が温かいのだ。

 

とりあえずケルベロモンの安全は確保したんだし、時空の裂け目を閉じるとしよう。

これ以上裂け目をそのままにしておくワケにはいかない。

理性を失った魔物がデジタルワールドに落ちてしまうかもしれんしな。

ちょっと手間はかかるが、あの世界の者に任せるよりは早いだろう。

その後に調べ物をするとしよう。

あの世界のことを一から学ぶのだ。

ケルベロモンのことを知るために。

 

 

◇◆◇◆


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