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MH小説番外編 秩序を守るもの⑤

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番外編はここで終わりになります

読んでくださった皆さん
ありがとうございました(^∇^)






◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



???「・・・クレア!」

クレア「ジュン・・・」


クレアはタンジアの近くにある病院にいた

足の骨折は幸いそこまで酷くはなく
2週間ほどの入院で退院できるとの診断

病院でクレアは夫のジュンと再会を果たした

ジュンは片手剣使いとして、それと同時に怒らせると
とてつもなく恐ろしいことでも有名なハンター


ジュン「知らせを聞いて驚いたぞ。だから止めろと言ったのに・・・」

クレア「ごめんなさい・・・どうしても行きたくて」

ジュン「・・・身ごもっていると知ってれば全力で止めたのにな~」

クレア「いや、私も知らなかったし・・・知ってたら流石に行かないよ」


クレアは病院で改めて自分の妊娠を知ったが
ディバアームに言われていたので喜んだものの驚きはしなかった

ジュンはクレアがもっと驚いて喜びのあまり倒れると
思っていたのでそれが少し疑問だった


ジュン「もっと喜ぶと思っていたのだけど、そうでもないな」

クレア「あっ・・・それは・・・」


クレアは周りに誰もいないのを確認すると
ジュンにだけあの時起こったことを全て話した

モンスターがクレアを助け、人の言葉を話したという
にわかには信じられないことだったが
動けない状態、他の肉食性モンスターもいる森の中で
それ以上の怪我もなく、助かったクレアの話をジュンは信じた


クレア「ディバアームは私の事庇って片脚失くしてしまって・・・」

ジュン「あの辺りにはナルガクルガやラギアクルス亜種などの強力なモンスターも生息しているからな・・・片脚がないのはかなりのハンデだろう」

クレア「お礼に赤ちゃんが生まれたら見せに行きたいの!ダメかな?」

ジュン「・・・止めたところで一人で行くんだろう?」


生まれたばかりの赤ん坊を連れて森へ行く
本当は反対したかったがクレアの性格を
よく知っているので仕方なく賛成した

反対したところで一人で行くに決まっている


ジュン「ただし、一人では行かせないぞ!俺も行くからな!」

クレア「ありがとう・・・ジュン」

ジュン「俺だってクレア助けてくれた礼言いたいしな。ところでお前、ギルドに妙なこと頼んだだろう?」

クレア「あれ?ばれた?」

ジュン「バレバレだ!足折れているんだし、身重の体なんだから無理するなよ」


実はクレアはギルドへ戻ってくるなり
ある事を調べて欲しいとギルドに頼んでいた

一件今回の調査対象だったディバアームとは
全く関係なさそうだったが、クレアには確信があった



2週間後、退院するとすぐその足で
ギルドの受付があるタンジアの港に急ぐ


クレア「すみません、クレアですけど・・・私の依頼終わっていますか?」

受付嬢「はい、終わっていますよ。これがその報告書です」


クレアは受付嬢から受け取った報告書の内容を確認する
そこにはクレアの狙い通りの内容が書かれていた


受付嬢「でも、それ吸血竜のことではないですよ?大きな腕っていうところは共通点ですけど、吸血竜はイビルジョーも倒してしまう【新月の悪魔】なんですから」

クレア「いいえ、彼らは悪魔ではありません。・・・やっぱり昔は神って呼ばれていたんだね」

受付嬢「・・・はい?」




クレアの依頼は
『子供か森を守る神を記した記述があるか調べて欲しい』
というものだった

クレアはディバアームの生態を知り

もしかしたら昔は悪魔ではなく神と呼ばれていたのではないか・・・
だから大きな腕を持つ悪魔という記載がないのではないか・・・

そう考えたのだ

その予測通り、もう何百年も前のものだが
”森を守る神”について記された記述が見つかった



記述にはこう書かれていた



―深き森に入るなかれ―

―その森には神が棲む―

―大きな腕を持ちいかなる災禍からも森を守る神―

―生まれし者を慈しむ大いなる者―

―我らの声が届く―

―森を守る者に神が応える―

―森を愛する想いを忘れるなかれ―

―さすれば永遠の恩恵を与えよう―





クレアは早速ディバアームを古龍として
正式認定させるために動き出した

古龍と認定されれば、よほどのことがないかぎり
ギルドに依頼は来ないし並のハンターはクエストを受注できない

どちらの安全にも繋がると考えたのだ


ディバアームとの約束を守り、クイーンのことを抜きにして
ディバアームが人の言葉を話せることも言わないよう
務めていたため、かなりの時間がかかった

ディバアームが古龍として正式認定されたのは
クレアがその活動を始めてから半年ほど立ってから・・・

もうクレアのお腹も大分目立ち始めたころ



そして古龍として正式認定された際
ディバアームに新しい名前が与えられた

命名したのはクレアだ

神と呼ばれていたモンスターに「貪る腕」という
意味の名前など似合わない!

自分のテリトリーを命を賭して守る
自分の種の秩序を守る者・・・
それに見合う名前をクレアは考えた

吸血竜ディバアームの新たな名は



森守龍オルディーオ









━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─






【怒り喰らうイビルジョー】との戦いから半年ほど・・・
ディバアームを古龍と正式認定されてからほどなく

その森には大粒の雨が降り注いでいた


断崖絶壁の崖の中腹辺りにある洞穴の中
右の前脚がないディバアーム改めオルディーオが
横になり眠りについていた

しばらくすると何かを感じ取ったのか目を覚ます
大きな耳をしきりに動かし様子を探る


オルディーオ「・・・何か御用ですか?クイーン」

クイーン「フフフ、やはりどんな忍び足で来ても我が種の聴覚では無駄か」


オルディーオの住処にクイーンがやってきた
雨で濡れた体を震わせて雫を払う


オルディーオ「10km先の音も聞き取れますからね、それで何故ここに?」

クイーン「夜這い」

オルディーオ「変な言葉覚えないでください!!」

クイーン「冗談だ。ちょっとそなたの様子を見に来たのだよ」


クイーンはイビルジョーとの戦いで片脚を失った
オルディーオの様子が気になって見に来たのだ

もう傷口は塞がっているが痛々しい


クイーン「どうだ?不便ではないか?」

オルディーオ「最初の頃は・・・今は大分慣れました」


と、よく見るとまたクイーンを守る者がいない
耳を澄ませても聞こえる範囲にはいないようだ


オルディーオ「クイーン・・・守りの者はどうしました?」

クイーン「ああ、そなたに会いに行くと言ったら猛反対されたから・・・また一発殴って置いて来た」

オルディーオ「・・・またですか、守りの者も気が気じゃないでしょうに・・・」

クイーン「とにかく・・・元気なようで良かった」


クイーンはオルディーオを体を気遣うように
横に座ると突然とんでもないことを言い出した


クイーン「そなた・・・次の繁殖期になったら私のテリトリーに来ないか?」

オルディーオ「・・・は?」

クイーン「私はそなたが気に入ったのだ。その話をするためにも来た」

オルディーオ「ちょ・・・冗談ですよね!?」

クイーン「いや、本気だよ」

オルディーオ「な、何言っているんですか!?こんな片脚失くした俺に・・・大体貴方には我が種が決めた伴侶がいるじゃないですか!」


実はクイーンには同種内で決めた伴侶がいる
基本クイーンはその伴侶とのみ繁殖を行う
しかしクイーンは半分呆れたように語った


クイーン「ああ・・・あいつか・・・この間な、私にいきなり後ろから抱き着いて押し倒してきたから頭にきて・・・ボコボコにして私のテリトリーから追い出した」

オルディーオ「・・・え~・・・」

クイーン「反対はされるだろうが、やっぱり自分が気に入った者がいいと思ってな。ここのことが気になるなら繁殖期の間だけで良いぞ」

オルディーオ「我が種の女が男を選ぶ基準は強さ、片脚を失っている自分を選ぶ女などいないと思っていましたが・・・貴方は何を考えているか分かりません」

クイーン「よく言われるよ」

オルディーオ「以前も・・・我が子を人間に預けたそうじゃないですか」


クイーンの表情が固まり、動きが止まった


オルディーオ「一体何のために・・・人間にいいように利用されたらどうするんですか!この間のような人間ばかりではないと知っているハズでしょう!?」


クイーンはゆっくり立ち上がると
寂しげな顔で雨が降り注ぐ外を見つめた


クイーン「・・・仕方なかったのだ・・・あの子はあのままでは・・・生きられない」

オルディーオ「・・・?クイーン?」


しばらくの間、静寂が続いた
クイーンは振り返ると話を戻し、話題を切り替えた


クイーン「・・・さっきの話は考えておいてくれ、近いうちにまた来る」

オルディーオ「いえ・・・しかし・・・」

クイーン「子供が生まれたらあの人間と見せ合いっこできるぞ?きっとあの人間も喜ぶ」


それを聞くとオルディーオはその光景を想像した

確かにクレアは怪我の事をかなり心配していたから
次に会った時に子供を連れていれば安心するだろう・・・

頭を抱えて考え込むオルディーオ


クイーン「とにかく考えておいてくれよ?また来る」


それだけ言うとクイーンは洞穴を後にした
自分のテリトリーに戻るために雨の中を走り抜ける



クイーン「きっとその頃にはあの者も我が子のことを聞くためにここへ来るだろう。愛しき我が子よ・・・どうか・・・」




森を走り抜ける音さえ消してしまうほどの雨の音が
まるで彼女が泣いているように思えた




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