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MH小説エピソード20~失われた心~

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ゴア・マガラのあれ……自分じゃいいのを
思いつかなかったからシエルの案を採用しました





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



獅優と千姫の帰りを待つ左官、るり、
真夜、メディオは原生林でのんびり過ごしていた

とは言えずーっとのんびり過ごしていたわけではなく
ちゃんと左官とるりに見て貰いながら
真夜とメディオで互いに戦い合い練習もしている

そして日が暮れようとしていた頃、
真夜が獅優と千姫が戻ってくるのを感じ取った


「そうですか、良かった。無事のようですね」

「うん、本当に良かった!……ってあれ?」

「どうしたの?」

「うん、なんかね。千姫が左官達やメディオにも
狂竜病の抗体を早く持たせろって」

「狂竜病の?何かあるのかな?」

「分かんないけどここに近付いてくる音は3つだよ」

「……3つ?獅優と千姫の他に誰かいるのでしょうか?」


しばらく待つと千姫が獅優を背に乗せて真夜達の前に降り立った
そしてもう一体も……


『悪いが左官、こいつの治療を頼んで良いか?』

「こ…このモンスターはゴア・マガラ」


なんとそれは狂竜病の原因となった鱗粉をまき散らしている
獅優達が廻る者と呼んでいるモンスター、ゴア・マガラだった

ゴア・マガラは降り立つとその直後に地面に崩れ落ちた
かなり弱っているのは誰の目から見ても明らかだった




━─━─━─━─━─




左官達は獅優の巣穴にゴア・マガラを運ぶと治療を開始した
出血は酷いが致命傷には至っていない、大事にはならないようだ

治療を終えるとよほど弱っていたのか
ゴア・マガラは体を横たえ眠り始めた

なんだか憔悴しているように真夜には見えた


『全く…あのまま天空山にいれば間違いなく
獣王に殺されていたのに「ここを離れるつもりはない」の
一点張りで説得が大変だったよ。大切な場所なのか知らんが…』

「何故ゴア・マガラを連れてきたのですか?
このモンスターは狂竜病の元凶でもありますし
貴方の種族が縄張りから離れざるおえない状況を
作った張本人とも言える存在でしょう?」


左官が尋ねると千姫は驚くべき事を口にした


『確かにそうなんだが…種を絶滅させるつもりはない。
獣王がそいつが最後の一体だと言っていたからな、
本当にそうならそいつが死ぬと廻る者は絶えてしまうだろう』

「……え!?」


なんとあの時、獣王はその者が最後の廻る者だから
そいつを殺せば災いが消え去ると言っていたのだ。

そして獣王と対峙した獅優は更に驚愕の事実を述べた


『左官、直接会ってはっきりしたことなのだが…
獣王は千姫の推測通り正気を失っている。
というよりも心がない、と言った方が正しいな。
”黒神”のことを知らないと言った時点で確信したよ』

『なんだって!?』





━─━─━─━─━─




あの時、獅優は獣王との対話を試みていた
獣の種の王であるなら獣の種である自分の言葉に
耳を傾けてくれるかもしれない、

もしそれが違い以前ババコンガ亜種が教えてくれた
秩序の神だったとしたら、事情を話したら
こんな戦いを止めてくれるかもしれないと考えたからだ


『獣王、俺は貴方と戦うつもりはない。
どうか攻撃を止めてください。この人間も
俺の仲間です、悪い者では決してありません』


獅優がそう獣王に言うと思いもよらない答えが返ってきた


『……廻る者……殲滅する。それが我が眷属の望み、
そいつが…いる…限りこの災禍は……終わらぬ。
邪魔立てするものは誰であろうと排除するのみ』

『獣王!?』


そう言うと獣王が獅優とフランキーを攻撃してきた
獅優はフランキーを庇いながら攻撃を巧みに避ける

獅優は千姫が言っていたことを思い出す
まるで自分の意志を持っていないように感じるとそう千姫は言っていた

獅優はそれを確かめるために最後の賭に出た



『獣王!廻る者を殲滅したらきっと”黒神”は黙っていません!
”黒神”と戦うことは貴方の本望ではないハズです。
貴方と”黒神”が戦ったら間違いなくこの大地は焦土と化すでしょう、
それでもいいんですか!?他の生き物が住める場所では…』


獅優がその言葉を言い終わる前に獣王が口を開く


『コクシン…?それは誰ぞ…我はそんな者は知らん…
知らん者の名など口に出すな、邪魔をするなら貴様も敵ぞ…』

『そんな……くそっ!フランキー!!』


獅優はフランキーを抱きかかえ急いでその場を離れた
直後、あの攻撃が繰り出されたのだ
一瞬でも遅かったら2人共かなり危ないところであった





━─━─━─━─━─




『黒神って言うのはこの地に生きる者なら
誰でも知っている龍族の頂点たる存在だ。
黒主、龍王とか色々な名前で呼ばれていたりするが
一般的には黒神と呼ぶのが普通だ、そんな存在を
獣王が知らないというのは明らかにおかしい。
太古昔に共に戦ったという伝説もあるのだから…』

「じゃあ…獣王が正気じゃないっていうのは間違いないのね。
でも一体どうしてそんなことになっているんだろう?」


獣王が正気を失っているのはほぼ間違いない
…が、何故正気を失っているのか理由が分からない
理由は分からないが、いずれにせよこのまま
放っておくことは出来ないだろう、

その牙がいつ人間に向けられるか分からない
いや、その対象がどの種族になるかさえ不明だ


『理由はこの際どうでもいい、問題は
この状況はかつて無いほど危険だと言うことだ。
獣王をこのままにしておけば必ず黒神が動く。
そうなったら……もう誰にも止められないだろう』

「確かにそうですね。これは……
獣王と本当に対峙しなくてはならない
事態ということになります」

『今はきっとこの廻る者を探すことに躍起に
なっているだろうから心配ないが時間の問題だ。
妾≪わたし≫は引き続き情報を集めよう、
獅優も十分に気を付けろよ』

『ああ、分かってる』

「ねぇねぇ、その黒神に協力を求める事って出来ないの?」


るりは一番獣王と対抗できそうなモンスターに
協力を求めることは出来ないものか質問してみたのだが
速攻で『無理だ!』という返答がきた


『何でダメなの?』

『物凄くはっきり言うけど黒神は人間が嫌いなんだよ。
もし人間が黒神に近付いたら一瞬で消し炭にされるのがオチだ。
妾≪わたし≫も人間と手を組んでいるなんて黒神に知られたら…』


そう言うと千姫がガタガタと震えだした
獣王にさえ物怖じしないヤツがこうなるとは…
一体どんなモンスターなのか知りたいところだが
これ以上深追いしないほうがいいと思い左官もるりも口を紡いだ


「では千姫。引き続きお願いします」

『今日は疲れたからここで休むけどね、
左官達も帰ったらすぐどうするか決めるために
皆とよく相談するといい、危機的事態だ』

「ありがとう千姫、貴方も気を付けてね」

『べ…別に』


真夜と獅優で左官とるりをベースキャンプまで送ると
すぐに巣穴に戻ってきた

今のところは変わりは無い
ゴア・マガラは深く眠っているのか微動だにしなかった


『彼はその種で最後の一人…なんですよね?
病を振りまく者だと忌み嫌われ、しかも
自分が最後の一人だなんて…僕なら耐えられません』

『真夜だってそうだよ、絶対に無理…』


真夜とメディオがそんなことを言っていると獅優が近付いてきた
自分も孤独だったものだからなんとなく今の廻る者の気持ちも分かる


『同情されるのを嫌う者も多いが
かの者はどうだろうな、まぁ……
真夜なら励ましてあげられると思うぞ』

『ほんと?真夜頑張る!』




もう日が傾き夜になろうとしていた
真夜はいつゴア・マガラが起きるのか
片時も離れずに見守っていた

かつて自分を親に捨てられた者だと言った
ゴア・マガラとは別の個体であると真夜は確信していたが
なんとなく放っておけなかった


結局ゴア・マガラが目を覚ましたのは翌日の明け方だった
真夜は待っていたと言わんばかりに彼に寄り添う





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