出る予定はないのに名前は決まっている
天守と海守、オリジナルモンスター
天守
鏡龍(きょうりゅう) プラティウルス
海守
鯱王(こおう) レヴルカムイ
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ぴよ達を天空山に送り届けた後、真夜達は
獅優とメディオが待つ原生林へ帰ってきた
帰ってきたときにはもう日が暮れ、
辺りは暗くなっていたが獅優は真夜達が帰ってくるのを
今か今かとずっと待っていた
『お帰り、どうだ?長大なる者と話は出来たか?』
『なんとか話は出来たよ。今から長大なる者から
聞いたことを全て話してやろう。一先ず巣穴に行くか』
全員一旦獅優の巣穴に戻るとメディオが待っていた
無事な様子に安堵の表情を浮かべるメディオ
千姫は長大なる者から聞いたことを獅優をメディオに話した
そのほとんどが信じられないようなことだったが
とりあえず狂ってしまった獣王を元に戻せる可能性がある
方法があることに獅優は安心していた
彼も秩序の神たる存在の命を奪うことはしたくなかったのだ
しかしその方法はあくまで元に戻る可能性があるだけで
100%の方法ではない。元に戻らないことも十分考えられる
『でも…可能性があるだけでも大分違いますよ。
きっとシエル達もその方法に賭けようと言うハズです!』
『そうだな』
『それでな獅優よ。あんたにちょいと重要な話があるんだ。
ぴよ達を天空山に送る途中で話し合い決めたことなんだが…』
『ん?なんだよ…重要な話って…』
千姫とクロムはぴよ達と話し合って決めたことを獅優に話し始めた
獣王の力を第三者に継承する方法があるらしいとのこと
そして……
『お…俺が次の獣王に!!??』
今まで聞いたことが無いような大声で驚く獅優
あまりの大声に聴覚が発達している真夜が気を失ってしまった
それに気付いた獅優が慌てて真夜に駆け寄る
『あああ…すまん真夜』
『おい獅優、真夜の目の前で大声を出すのは御法度だぞ』
『いや…大声を出さずにいられるか!!大体何故俺なんだ!?
これまで異端者と言われ続けてきた俺に次の獣王になれと!?
いくらなんでも馬鹿げている……どう考えても無理だろう!!』
『しかし他に獣王の力を継承するに値する者はいない。
一刻を争う状況だから探す時間もおしい…でも
妾≪わたし≫もお前が一番適任だと思っている』
『……は!?な…何故だ?何故そう思う…』
千姫は強い力を持ちながらそれに傲らない心を持ち、
そして異端者として生きてきた経験から弱者の気持ちを
誰よりも分かっている獅優が適任だと考えていた
何よりも人間と接してきたことで深い慈悲も愛情も知っている
これ以上無い、次代の獣王…秩序の神に値する者だと確信をしていた
どこを探しても恐らくそんな存在はいないだろうとも…
『…でも…俺なんか…獣王に相応しくないよ。
皆俺のこと買い被り過ぎてる…』
『えー、むしろ一番向いてると思うよ?
その証拠に異種族の真夜やメディオに凄く優しいもん』
ようやく目を覚ました真夜が獅優に語りかけた
真夜は今まで獅優と一緒に過ごした日々を思い出す
生きる気力を失っていた自分を励ましてくれたこと
初めて戦い方を教えてくれたとき、厳しくも優しく見守り、
まるで本当の父親のように温かく接してくれていたこと
数ヶ月共にいた真夜は誰よりも獅優こそが
次の獣王に相応しい者だと確信していた
『自分のことを知っている者は自分がそれに相応しいとは
決して言わないんだって左官が言っていたよ。
きっと獅優なら誰よりも優しい獣王になれる…』
『真夜……』
『それに獣王になれば獅優がなりたかった守る者になれるよ!』
『う……それは確かにそうだけど……』
まだ継承すると決まっていないし、継承する方法も分からない
角を折ったことによるショックで獣王が正気に戻ればその必要は無い
しかし万が一のことも考えないといけない
もしそうなったとき獅優の意志が必要不可欠だ
『……少し考えさせてくれ。すぐには決められない』
『分かった。では妾≪わたし≫は行くところがあるから
少しの間別行動をとらせてもらうよ』
『分かった!気を付けてね』
そう言うと千姫は足早に原生林を後にした
何処に行くかは告げなかったが、何か決心をしたような感じだった
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その日の夜遅く、獅優は月を見ながら考えていた
獣王と戦うことは自ら決意したことだったが
まさかそんな話が自分に来るとは思いもしなかった
異端者だからと親に捨てられ、金色の姿になれない自分に絶望し
過去の自分から逃げて必死に剛雷の者として生きようと演じた日々
それを考えるとどうしても自分が次の獣王…
秩序の神たる存在に向いているとは思えなかった
『獅優寝ないの?いつもならとっくに眠っている時間だよ?』
獅優を心配した真夜が巣穴から出てきた
真夜は獅優の隣に寄り添うように座る
『自分が秩序の神になるなんて想像できないでしょ?』
『全く想像出来んな…しかし考えれば考えるほど
やはり俺は秩序の神には向いていないよ』
自分でなければ別の者を探すしかないのか…
でも今まで生きてきた中でそんな者見たことはない
『真夜は俺に獣王になって欲しいと思っているのか?』
『獅優なら立派な獣王に…蛇王さん風に言うと
地守になれると思うからだよ』
『俺は愚かな者だ。同種からは煙たがられてる存在だし、
他の種族からだって人間とあんな風に付き合っている俺が
次の獣王なんてお笑いぐさだろうよ…』
『獅優がるり達と一緒にいるのは友達だからでしょ?
どこがお笑いぐさなの?それとも自分でもそう思ってるの?』
『……え?』
獅優にとって左官達は傷つき死にかけていた自分を救ってくれた恩人
そして自分を取り戻すきっかけをくれた存在でもある
自分にとってとても大事な…かけがいのない友達だ
左官達や真夜が側にいるときは心が落ち着く
誰がなんと言おうとそれは変わらない
『自分の事がよく分かっているから種族の壁を越えて
るり達と一緒にいるんでしょ?もしそういう事態になっても
獅優なら地守としての力に溺れず上手くやっていけるよ』
『そうだな…悩みすぎて肝心なこと忘れるところだった
獣王になったらお前達といずれ別れなくてはならないだろう。
それを考えるととても寂しいが…お前達と共に過ごしたこの地を
守っていけると考えればきっと大丈夫だろう』
『もしそういうことになったら思い出たくさん作ろうね』
『思い出?なんでまた……』
『それはいつか分かるよって言ってたよるりが。
真夜もよくその理由は分かんないや』
その理由は獅優にも分からなかったが獅優は心を決めた
できればそのような事態にはなって欲しくないが
もしものときのために…それが彼らを守ることになる
『さて…そろそろ眠るか…クロムもメディオはもうとっくに寝ただろう』
『うん、クロムはずっと飛んでて疲れたみたいで爆睡』
『真夜も眠りなさい。寒かったら俺の側に来ると良い』
『ありがとう、獅優』
獅優と真夜は巣穴に戻るといつものように寄り添い眠りについた
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☆後書き☆
海守の名前の由来はアイヌ語でシャチを表す
「レプンカムイ」からです
「カムイ」は神という意味です
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MH小説エピソード26~地守の候補~
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