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竜帝の伝説《小説》 永遠の絆4話

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期間が空いてしまって申し訳ありません
今回はイラストがないですが続きをどうぞ




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



メタルガルルモンの帰りを今か今かと待つウォーグレイモン
マタドゥルモンの容態は一向に良くなる気配がないので
彼は無意識のうちに焦りの表情に変わってきていた

熱も下がらない、激痛によりほとんど動くことも出来ない
最愛の存在の状態に為す術無く途方に暮れていた


「お待たせ、グレイ!呼んできたよ!」


その時ようやくメタルガルルモンが帰ってきた
遅いぞ、と言い後ろを振り返った時、ウォーグレイモンは言葉を失った

そこにいたのは医師ではなく、この世界の秩序を守る存在
”ロイヤルナイツ”の一体であるアルフォースブイドラモンだった


「な…何故…アルフォースブイドラモン様がここに…!?」

「あー事情は後で話すよ。アルフォースブイドラモン様
彼女…マタドゥルモンが急に倒れた俺の親友です」

「分かりました。では診てみましょう」


ワケが分からないウォーグレイモンを横目に
アルフォースブイドラモンはマタドゥルモンに近付いた

しかし、すぐにアルフォースブイドラモンの足が止まった
一目見た瞬間に彼女がどのような状態なのか分かったからだ


「これは…病ではありません」

「え…?病気じゃない…って…?」


マタドゥルモンは熱もあり、とても苦しそうに悶えているのに
病気ではないと即座に言い放ったアルフォースブイドラモン
次に彼の口から飛び出したのは信じられない言葉だった


「これは進化の前兆です」

「進化の前兆!?これが!?」


意味が分からない二人にアルフォースブイドラモンは
分かりやすく説明してくれた


「他の世代で進化する時と違い、究極体へ進化する時は
かなりの量のデータ変換が起こります。貴方達も
究極体へ進化する直前に体に何かしら異変が起こったはずです」

「ええ、確かにありました。…ですが異変と言っても
少し体がだるくなって食欲が落ちるくらいで
マタドゥルモンのような状態になることはありませんでしたけど…」

「通常はそうです。しかし完全体の時とは比べものにならないくらい
強大な力を持つ究極体デジモンへと進化する場合、そのデータ変換は
通常とは比較出来ないほど膨大になります。そして今の彼女は
その膨大なデータ変換に体がついていっていない状態なのです」

「えーーっと…それってつまり…」

「マタドゥルモンはその膨大なデータ変換が起こるほど
強大な力を持つ究極体に進化する…ということなのですか?」

「そうです。そしてこれだけの量のデータ変換が起こっているということは
恐らく彼女は”ロイヤルナイツ”や”七大魔王”クラスのデジモン
…いえ、もしかしたら我らより更に強いデジモンに進化する可能性があります」

「な…なんだって!?」


その事実に二人は絶句するしか無かった
進化の前兆であることと、そして”ロイヤルナイツ”並か
それ以上の強さを持つデジモンに進化する可能性があるという真実に…


「進化の前兆である以上、私に出来ることは何もありません。
ただ覚悟はしておいたほうがいいでしょう」

「…覚悟って…何故ですか?」

「さっきも言った通り、彼女は膨大なデータ変換に
体がついていっていない状態にあります。
稀に…そのデータ変換に耐えきれず命を落とすデジモンもいるのです」


二人は再び言葉を失った
もしかしたらマタドゥルモンが死んでしまうかもしれない
何とかしたくても進化の前兆であるため、何もすることが出来ない

二人の顔が更に青ざめた


「それと…もし”七大魔王”に進化した場合は
進化前の記憶を全て失うことがあるという調査報告があります。
理由までは分かっていませんが、その場合は貴方達も
この辺りに住んでいるデジモンも大変危険です。
もしもの時のために今のうちに村から離した方がいいでしょう」

「そ…そんな…」

「そしてその時は我ら”ロイヤルナイツ”は
無論そのデジモンを討伐するために動きます。
その時は決して我らの邪魔をしないようにお願いします。
邪魔をしたら貴方達も討伐対象を見なしますのでそのつもりで」

「……分かり…ました。
ありがとうござい……ます」


アルフォースブイドラモンは用が終えると
元の任務に戻ると言い、村を後にした

彼が述べた事実にただ二人は立ち尽くすしか無い状況だった





━─━─━─━─━─




その日の夜

ウォーグレイモンはもう意識さえ戻らなくなった
マタドゥルモンの傍らにいた

もし”七大魔王”に進化してしまったら
そして自分達のことを忘れてしまったら…

自分はその時どうすればいいのだろう

きっと耐えられない

ずっと側にいると、守ると誓ったハズなのに
今彼女が置かれている状況に何も出来ない自分が悔しかった


「グレイ、あんまり背負い込むとまた倒れるぞ。顔色めっちゃ悪いし」

「ガル…すまない。お前も不安なのに俺がこんなでは…な」

「とりあえずアルフォースブイドラモン様の言う通り
夜の内にマタちゃん移動させよう。崖下に洞穴があるからそこに…
あんまりそうなるとは考えたくないけど万が一のためにさ」

「そうだな、分かった」


ウォーグレイモンはマタドゥルモンを抱きかかえると
崖下にある洞穴へ向かった

洞穴に着くとメタルガルルモンが先に色々と
用意してくれていたのか一通りのものが揃っていた

メタルガルルモンが敷いてくれていた柔らかい藁に
マタドゥルモンを優しく横たえた


「これからどうなるんだろうな…
アルフォースブイドラモン様の話では
早ければ明日には進化するだろうとのことだったが…」

「そうだね。でも何も出来ないしなー…
マタちゃんが”七大魔王”に進化しないことを祈ることくらいだよ」


頑張って究極体に進化したのに
出来ないことが多いことをこんなときに実感するとは
二人は思ってもいなかった

考えたくないのに悪いことばかり頭に浮かんでしまう
そうならないように祈ることしか本当に出来ない

自分はあまりにも無力な存在だったと痛感した



━─━─━─━─━─




翌日、一睡も出来ないまま朝を迎えた

マタドゥルモンはまだ意識を失ったまま
しかし心なしか昨日よりは辛そうに見えなかった

やはり今日中に進化するのだろうか
言いようのない不安が二人を包んでいた時だった







『ドオォォーーーーーン』



遠くで何かが爆発するような音が聞こえてきた


「な…なんだ!?」


洞穴の外に出るとさっきまで青空が広がっていたのに
いつの間にか黒く分厚い雲がこの辺り一帯を包んでいた

雨雲なのかと思ったが様子がおかしい

すると森の奥に住んでいたデジモン達が一斉に逃げてきた


「どうした!?何かあったのか!?」

「ま…魔王型デジモンが攻めてきたんだ!
こっちに向かってきてるんだよ!
突然攻めてきたから逃げ遅れたデジモンがまだ…」

「魔王型デジモンだって!?」


ウォーグレイモンは耳を疑った
ここはスーツェーモンの直轄地であるため
魔王型デジモンが襲撃してくるとは考えにくかったからだ

しかし音が聞こえた方へ視線を向けると
赤い炎が見え、黒煙が上がっていた

どうやら本当のことのようだ


「魔王って”七大魔王”か?」

「いや、違ったけど…でも”七大魔王”の配下だって言ってた」

「”ロイヤルナイツ”やスーツェーモン様は?」

「まだ…来てない」

「分かった。君は早く逃げろ。ガル、俺は逃げ遅れているデジモンを
助けに行くからマタドゥルモンを頼んだぞ」


ウォーグレイモンの言葉にさすがのメタルガルルモンも驚いた
もし魔王型デジモンと接触したら勝ち目が薄いから尚更だ

いくら”七大魔王”ではないとはいえ
魔王型デジモンの実力は他の究極体から抜きんでている


「安心しろ、戦うわけでは無い。助けに行くだけだ」

「いくらそうでもグレイ一人じゃ危険すぎるよ!!」

「俺はスーツェーモン様からこの森の管理を任されている。
俺にはこの森のデジモンを守る義務があるんだ!
だからガル…マタドゥルモンを守ってくれ……」


ウォーグレイモンは言い出したら聞かないのを知っているので
メタルガルルモンも反論するのを止めた


「分かったよ、でも無茶はするな」

「ああ、ガルも気を付けろよ」


ウォーグレイモンは爆音が響く現場へ向かった

そこはすでに炎に包まれており
そして何より、悪魔や堕天使型デジモンの軍勢が見えた



「くそ…なんなんだ一体…どうして急にこんなことに…」





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



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