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竜帝の伝説《小説》 真なる意志を胸に[7話]

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いいね を下さった方申し訳ありません。

 

 

 

暑すぎて漫画に集中できないので

ずっと止まっていた小説を再開することにしました。

2年放置してるとかどうなの……

 

なろう小説読みまくっていたので、そこそこ小説書くのは上達しているハズ

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

~スレイプモン視点~

 

 

 

「……スレイプモン。忙しいところ悪いがちょっといいか?」

 

明日雷雨になるのだろうか?

アルフォースのほうから俺に話しかけてきた。

 

「2分ならいいぞ。マジで忙しいからな」

 

今は本当に休む暇もないくらい忙しい時期だ。

一旦忙しい時期に入ると、普段一切急がせないイグドラシルが豹変する。

現に今も俺2週間で5つの任務をこなせ、と言われているほどハードスケジュール。

その5つの任務も難易度が高いものしかないから超ブラック!

ちなみにアルフォースもすでに3つ任務請け負っている。

俺に話しかける時間も惜しいだろうに、どうしたんだ?

 

「さっき自衛軍の宿舎に少し寄ったんだ。白帝城に戻ってくるとき、妙な気配を感じ取ったから」

 

「妙な気配?」

 

「ああ。あんまり感じるものではないんだが間違いないだろう。明日か明後日、メガログラウモンは究極体に進化する」

 

「マジか!?」

 

アルフォースは歴代の聖騎士の中でもトップクラスに気配を読む力に長けている。

ほんの僅かな気の変化さえ感じ取ってしまうほど正確に感知する。

俺も気配を読むのは得意なほうなんだが、こればっかりはアルフォースに勝てない。

 

「直接会って改めて感知したから確かだ。しかもかなり膨大なデータ変換が起こっているから、"ロイヤルナイツ"クラスの実力を持つデジモンに進化する可能性が高い。……いや、むしろ聖騎士に進化するんじゃないのか? メガログラウモンの性格やこれまでの努力を考えれば十分あり得る」

 

「それは凄いな! ん? ってことは今メガログラウモン相当苦しんでいるんじゃないか? 俺も究極体に進化する時、体が無理矢理ねじ曲げられるみたいな苦痛が襲ったぞ」

 

完全体から究極体に進化する時、それまでの進化とは比べものにならないくらいのデータ変換が起こる。

普通はちょっとだるくなったり、風邪っぽい症状が出る程度だけど、最高位の究極体に進化する時に起こるデータ変換は尋常じゃ無いくらいの苦痛が襲う。

俺も死ぬほど苦しかった。

 

「実際そうだった。かなりの高熱が出ていたし、全身が痛いのか指一本も動かせないみたいだ。ガイオウモン達も心配していたが、こればかりは医師でもどうしようもない」

 

「耐えるしかないもんなー。薬も効かないし」

 

「時折、データ変換に耐えられずに命を落とすものもいるくらいだしな」

 

「う~ん。様子を見に行きたいけど、ちょっと手が……げっ!?」

 

話し込んでいたら2分をとっくに過ぎていた。

ヤバい、間に合わないかもしれない。

 

「すまん。もう時間ないから行くわ。またな」

 

「あ! おい、待て! メガログラウモンは……」

 

「ごめん。この話の続きは次の機会にな」

 

5つも任務をこなさないといけないから一分一秒も惜しい。

まぁ、忙しい時期が終わったら比較的暇な日々になるからいいけど。

 

「……約束のことはいいのかよ」

 

なにかアルフォースが呟いたが、俺の耳に入っていなかった。

忙しいのせいもあるが、自分の気持ちに蓋をするために"約束"のこと自体を忘れてしまっていたから。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

気が付くと陽はすっかり落ちて夜になった。

なんとか時間内に任務が終わりそうだ。

イグドラシルへの報告も含めると、任務終了は明日の夕方になりそうだけど。

その後にジエロ大陸に行って、また別の任務しないとだし、それから……。

あー! 忙しくて目が回りそう!

 

―ピピピピピッ

 

突然通信が入った。

誰だろう? こんな時に。

"ロイヤルナイツ"ではないな。

皆通信なんかする暇も無いくらい忙しいし。

通信相手を確認すると、ガイオウモンだった。

 

「……どうした?」

 

忙しすぎて思いっきり不機嫌な口調になってしまった。

今こんなことしている時間がないから普段の2~3割増しの不機嫌声だ。

 

『お、お忙しいところ申し訳ございません』

 

俺が不機嫌なことを全く隠していないから、ガイオウモンの声がかなり怯えていた。

 

『実はメガログラウモンの様子がおかしいのです』

 

「ああ。アルフォースから聞いてるよ。進化の前兆だろ。俺でもどうしようもないものなんだから放って……」

 

『いえ、そうではなく……何かに酷く怯えているのです』

 

「怯えている?」

 

『はい。しかし私達がいくら何に怯えているのか訊いてもただ「進化したくない、怖い、助けてスレイプモン様」と呟くだけでどうしようもなくて……』

 

なんだそりゃ。

進化したくないなんてこと言うヤツいるかよ。

 

『とにかくスレイプモン様。ほんの少しでいいのでメガログラウモンに会っていただけませんか? スレイプモン様の姿を見たらちょっとは落ち着くと思うのです』

 

言い分は分かるが、どうして手が離せない。

少しでもいいって言うなら、この任務が終わったら顔出すか。

 

「分かった。ただ明日の夕方になるから、そうメガログラウモンに伝えておけ」

 

『あ、明日ですか!? 駄目です。本当にメガログラウモンの様子は異常なんです。出来れば今日中に』

 

「悪い。もう切るぞ」

 

『お待ち下さい! スレ……』

 

―ブチッ

 

俺は強引に通信を切った。

俺の脚なら白帝城に2時間もあれば着くのに、俺はそれをしなかった。

そのことが決定的なミスに繋がるとは思いもせずに。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

夜が明けて朝日が昇り始めた。

連日の任務でちょっとバテ気味だが、イグドラシルへの報告が終わったら少し休めるし、もうちょっとの辛抱だ。

その時またピピピピ、と通信の音が鳴り響いた。

今度は何だよ。

こっちは忙しいってのに!

 

【イグドラシルより緊急通信】

 

「へ?」

 

まさかのイグドラシルからでした。

イラッときて通信先見ないまま出ちゃったけど、良かった。

一言も喋らなくて本当に良かった!

 

【新たなる聖騎士誕生】

 

【場所は白帝城が建つ峯鋼山(ほうこうざん)が麓】

 

【至急迎えて我が元へ謁見させよ】

 

ほほう。新しい聖騎士が生まれたのか。

場所が峯鋼山の麓?

そこは自衛軍の宿舎があるだけだから、まさか……。

 

「分かりました。すぐに向かいます。任務を中断してもよろしいでしょうか?」

 

【許す】

 

「ありがとうございます」

 

イグドラシルから許可をいただいたので早速行動開始。

しかしアルフォースが言っていたことが本当になるとはなー。

ウィルス種の本能のことがあるからちょっと心配だったけど、聖騎士に進化したのなら大丈夫なんじゃないか?

とはいえ、問題児と言われた自分が聖騎士に進化するなんて思わなかっただろうし、困惑してるだろうから早めに行ってやるか。

皆フォローしてくれているといいけど。

俺は足早に白帝城に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

2時間ほどで白帝城へ到着した。

そして麓にある自衛軍の宿舎に向かい降下する。

宿舎はファンロン鋼を含んだ岩山で構成された峯鋼山の麓を掘って作られている。

洞窟みたいな感じだが、中はかなり快適に過ごせるようになっている。

しかも世界で一番硬いファンロン鋼を含んだ岩石だから、よっぽどのことがない限り壊れないし。

そして宿舎に足を踏み入れようとした時、ある違和感に気付いた。

 

「……あれ? なんか妙に静かだな」

 

いつもなら宿舎の中にある訓練室で日々訓練しているから、ある程度声とか聞こえるんだけど、今日は物音一つしなかった。

 

「なんかあったのか? メガログラウモンが究極体に進化したなら、もっとこう盛大に祝ってると思ったんだけど」

 

もしかしてドッキリとか?

俺にドッキリかまそうとはいい度胸してるじゃねぇか。

まぁ、その線はないと思うけど、とにかくガイオウモンを呼ぼう。

 

「おーい。ガイオウモン。来たぞー」

 

そう声を出しつつ、宿舎に入った瞬間だった。

 

「……イ………タ」

 

「あ?」

 

ズン! と重く、鋭い衝撃が胸を襲った。

あまりに突然の衝撃に何が思ったのか分からず視線を向けると、鈍色の槍が俺の胸を貫いていた。

 

「は……あ、ぁ……」

 

攻撃されたと認識した途端、猛烈な痛みが全身を駆け巡る。

鈍色の槍の持ち主を確認しようと槍の持ち手から視線を辿った。

 

「デュー……ク、モ……ン」

 

それは"ロイヤルナイツ"の一角、デュークモンだった。

記録ではメガログラウモンからデュークモンに進化すると書いてあった気がする。

じゃあ、このデュークモンがあいつなのか。

 

だが、色が違う。

デュークモンは純白の鎧に赤いマントを纏っている。

しかし目の前にいるデュークモンは鈍色でマントも濃い青色だった。

まさか……!

 

「お前……ウィルス種の本能に完全に……」

 

「デモンズディザスター」

 

言い終わる前に、デュークモンは俺の胸に貫いていた槍を一気に引き抜き、更に連続攻撃してきた。

俺はほとんど防ぐことが出来ずにまともにその攻撃をくらった。

 

―ゴトン

 

何かが地面に落ちた音がした。

左腕が……攻撃に耐えきれずに千切れ落ちていた。

それにつられるように、俺の体も地面へと崩れ落ちた。

 

「あははははははは。きゃははははははははは」

 

狂気に満ちた笑い声が宿舎に響き渡る。

デュークモンは返り血を浴びた真っ赤な姿で外へと歩き出した。

俺のことなどすでに眼中にないのか、振り返りもせずに……。

 

「ス、レ……イプ、モン……様」

 

薄れ行く意識の中、ガイオウモンの声が聞こえた。

なんとか声のするほうへ顔を向けるとガイオウモンがいた。

 

しかし下半身が斬られ、体がほぼ真っ二つになった悲惨な姿をしていた。

 

ああ、そうか。

静かだったのはもう宿舎内のデジモンを全て殺した後だったからなんだ。

新しい獲物が来るのを待っていたんだ。

 

止めなければ、あいつは殺戮を繰り返す。

止めないといけないのに、もう体が動かない。

 

「ごめん……メガ、ロ……」

 

俺は激しい後悔の中、意識を失った。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 


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