Quantcast
Channel: 緋紗奈のブログ
Viewing all articles
Browse latest Browse all 694

MH小説番外編 秩序を守るもの④

$
0
0

自分のテリトリーを荒らすものは
たとえラージャンであろうが古龍であろが
戦いを挑む吸血竜ディバアーム

戦闘に特化するために背中の翼は大腕へ
飛行能力はなくなってしまったが
その攻撃力は全モンスタートップクラス




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




【怒り喰らうイビルジョー】へ戦いを挑む吸血竜の咆哮

その咆哮はイビルジョーを警戒し、
一旦近くの村に避難していた調査隊にも届いた


調査隊「な・・・なんだ!?今の咆哮は・・・」

調査隊リーダー「聞いたことがない声だな。・・・まさか吸血竜か!?」

調査隊「危険ですが、行ってみましょう。夜ではないので吸血竜か疑わしいが、行くだけの価値はあると思います!」

調査隊リーダー「そうだな、皆行くぞ!」





━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─





近くで戦闘を見ていたクレアは
とても人間が入り込むことが出来ない戦いに
ただただ唖然としていた・・・

ディバアームのあの大腕を主に使う攻撃

一撃繰り出すだけで木だけではなく
地面ごと大きくえぐられる

人間の建造物など一瞬で壊れてしまうだろう
かすっただけでも並のモンスターなら恐らく致命傷だ

しかもただ攻撃しているのではなく
どこを狙えば自分にとって有利になるか
ちゃんと考え尽くされている


クレア「・・・よく左官ってハンター達勝てたわね・・・」


一方イビルジョーは己の欲望のままに
ディバアームに喰らいつこうとしていた

【怒り喰らうイビルジョー】は加齢などの影響で
食欲を制御する機能に変調をきたした個体だと推測されている

常に飢えている状態なので喰うことしか考えていない


ディバアーム「普段の状態でも言葉が通じんのにこの状態は更に面倒だな」


イビルジョーの次の行動を予測しながら立ち回る

と、一瞬の隙を見逃さなかったをディバアームの攻撃が
イビルジョーの腹に直撃した!

バキバキと鈍い音が辺りに響く

肋骨が折れたか!?

体勢を崩すイビルジョーだが、その目はすでに
ディバアームではない別の標的に狙いを定めていた

イビルジョーがディバアームには目もくれず
反対方向へ走っていく


ディバアーム「マズい・・・!逃げろ!!」


イビルジョー狙いはクレアだ!

ディバアームはイビルジョーに見つからないように
風向きを考えてクレアを隠していたのだが
風向きが変わったらしく、怪我をしていた
クレアの血の匂いに反応したのだ!

イビルジョーが自分へ標的を替えたことに
クレアもすぐ気付いたが、怪我のせいで動けない

イビルジョーの鋭い牙がもう目の前まで迫る


クレア「・・・きゃあ・・・!」








・・・・・・・・・・・・








クレア「・・・あれ?・・・なんとも・・・ない?」


顔をあげると、目に飛び込んで来たのは
自分を庇い、前脚をイビルジョーに噛みつかれている
ディバアームの姿だった

苦痛の声をあげるディバアーム

必死にイビルジョーを引き離そうとするが
イビルジョーは前脚にガッチリ噛みついて離そうとしない

噛みついたままディバアームの体を右へ左へ振り回し始める

大腕でなんとか踏ん張ろうとするが体勢が悪く引きずられていく
咄嗟にクレアが持っていた肥し玉をイビルジョーにぶつけた!


驚いたイビルジョーはようやくディバアームの前脚を放した

しかしディバアームの前脚は皮一枚で
辛うじて繋がっている状態だった


クレア「ご・・・ごめんなさい・・・私のせいで・・・」

ディバアーム「・・・お前のせいじゃない、這いつくばってでもいいから逃げろ。”喰らう者”は俺がなんとかする」

クレア「でもそんな怪我じゃ・・・」

ディバアーム「前脚1本くらい腕で十分カバーできる、いいから・・・早く・・・」


千切れかけた前脚からかなり出血している
イビルジョーの唾液は強い酸性で消化酵素も含まれている
それのせいで更に傷口が悪化しているのだ

肥し玉の作用で少し離れたイビルジョーだが、すぐに戻ってきた

ディバアームは戦うためにイビルジョーに向かって歩き始めるが
動かない前脚がかなり邪魔をしている


ディバアーム「もう治らんだろう、こんな脚くれてやる」


そう言うと千切れかけていた脚を自分で引き千切り
イビルジョーに投げつけた

イビルジョーはその脚に喰らいつく

その隙を狙って大腕の一撃をイビルジョーに叩き込む
しかし傷が痛むのかさっきより動きが鈍い

簡単に避けられてしまった

一刻ごとにディバアームの動作が鈍くなっていく


クレア「だ・・・駄目だ。出血も酷いしあの怪我じゃ・・・大腕で攻撃するときにバランスを崩してしまう。このままだと・・・や・・・られる・・・」


クレアの心配した通りになった、
バランスを崩し、よろけたディバアームを
イビルジョーが思いっきり太い尻尾で叩きつけた

傷口に当たってしまい激痛でディバアームは動くことが出来ない

イビルジョーがディバアームに喰らおうと襲いかかる




「・・・頭を低く下げなさい・・・」



クレア「・・・・え?」


突然どこからか声が聞こえた

ディバアームはその声の通りに頭を低く下げる

頭を低く下げたと同時に巨大な爪がイビルジョーの
体を思いっきり切り付けた!

残像さえ残りそうなほどの速度の攻撃
イビルジョーは大きく吹き飛ばされた

その巨大な爪の持ち主はゆっくりと地面に着地する


クレア「もう・・・1・・・体・・・」


なんともう1体ディバアームが現れた
全身に古傷があり、自分を助けれくれたディバアームとは
雰囲気がまるで違う、貫録さえ感じられる


???「酷くやられたな・・・大丈夫か?」

ディバアーム「・・・クイーン・・・何故ここに・・・」

クレア「っ!?・・・クイーン!?」




$緋紗奈のブログ-小説用画⑨


クイーン「後は私がやろう、人よ・・・その者の治療を頼む」

クレア「は・・・はい!」


それだけ言うとクイーンはイビルジョーに向かって走り出した

クレアは持っていた回復薬や応急薬を
全部ディバアームの傷口にかけた

早くイビルジョーの唾液を洗い流さないと
更に傷口に悪化してしまう

あまりの痛みで顔が歪むディバアーム

次にクレアは調査隊のコートを脱ぎ
コートをナイフで帯状に切り裂くとそれで傷口を巻く

効果があるかどうかは分からなかったが秘薬も飲ませた
今できる手当てはこれくらいしかない


クレア「ねぇ・・・彼女は本当にクイーンなの?」


突然目の前に現れた個体がクイーンか
信じられず思わず訪ねてしまった


ディバアーム「ああ、以前一度だけお会いしたことがある・・・間違いない」


やはり全身に古傷がある個体が吸血竜の頂点である
クイーンに間違いないようだ

クイーンはイビルジョーと対峙する

イビルジョーは先ほど吹き飛ばされたことが
よほど頭に来たのか迷わずクイーンに向かっていく
















勝負は一瞬で終わった



イビルジョーの攻撃をクイーンは小さな動きで避けると
大腕を下から振り上げ顎を思いっきり殴りつける

その攻撃の直後今度は上からハンマーで叩き付けるように
大腕を振り下ろし、それがイビルジョーの首に直撃した


崩れるように倒れるイビルジョー


クイーンが首の骨をへし折ったのだ
最初の下からの攻撃で顎の骨も砕けている

イビルジョーは立ち上がろうとしているのか
必死にもがくが、首から下が動かない


クイーン「・・・今、楽にしてやろう・・・」


巨大な爪がイビルジョーの心臓を正確に貫く
イビルジョーは力なくその場に横たわり絶命した・・・




しばらく辺りに沈黙が流れた
永遠に続くかと思うほどの静寂・・・

それを破ったのはクイーンだった


クイーン「・・・人よ、その者はどうだ?」

クレア「あ・・・はい、この場で出来る治療はやりました。後は出血が止まってくれれば・・・」

ディバアーム「申し訳ありません、とんだ醜態をさらしてしまいました・・・」

クイーン「その人と腹の子を守ろうとしたのだろう?決して醜態ではない」


何故会ったばかりなのに妊娠が分かるのだろうとクレアは
かなり疑問に思ったが、恐らく聴覚がいいからだと自分に言い聞かせた。


クレア「ごめんなさい・・・私のせいでこんな・・・」

ディバアーム「お前のせいではないと言っただろう。俺の力不足せいだ」

クレア「でも片脚失っては貴方は・・・これから・・・」

クイーン「普段生きていくには問題ないだろうが、その状態に慣れるまでは苦労するだろうし何より戦闘に支障が出るな。腕で攻撃する時バランスを取り辛くなる」


クイーンの言葉にクレアは更に落ち込んでしまった
ディバアームはクイーンに「余計なこと言わないでください」と
人語ではない声で伝えた、クレアには小さな吠え声に聞こえる


クイーン「悪かったな人よ、そう落ち込むな」

クレア「私が脚を怪我していなければこんなことに・・・」


ついにクレアが泣き出してしまった
驚いて困惑する2体・・・


ディバアーム「な・・・泣くでない。それにお前が怪我をしてなければ会わなかっただろう?お前と話しをするの楽しかったぞ」

クイーン「大丈夫だ、慣れればこれくらい何ともない。過去にも片脚がない者もいたのだから・・・」

ディバアーム「クイーンが余計なこと言うからですよ!」

クイーン「す、すまない・・・私が軽率だった・・・」


2体のやり取りにようやくクレアが笑った
それに2体もほっと胸をなでおろした


クレア「貴方たちは皆人の言葉が話せるの?」

クイーン「いや、ごく一部の者だけだ。人に興味を持った者だけが言語を学ぶ」


ふと、ディバアームがあることに気付いた


ディバアーム「クイーン守りの者はどうしました?見たところ御一人のようですが」

クレア「・・・そういえばそうだよね」


ディバアームはクレアにクイーンのことを説明する時
必ず1~2頭の雄が近くにいると言っていた
しかし今クイーンの周りに他の吸血竜の姿は見えない


クイーン「ああ・・・それはな・・・」



$緋紗奈のブログ-小説用画⑩


クイーン「フフフ、今頃血眼になって私を捜しているだろうな」

ディバアーム「それはそうですよ!というかそれでは貴方の御身が・・・」

クイーン「別に守ってもらわなくても私は十分強い。それに守られてばかりは性に合わないのだ」

クレア「・・・?どういう意味?」


クレアが訊くとクイーンは静かに語り始めた


クイーン「人よ、私の一番の役目は子孫を残すことだ。我が種は繁殖能力が非常に低い、一生のうち1~2頭・・・いや1頭も子を産めぬまま終わる者もおる」


それが子が宝だと考える所以(ゆえん)だと教えてくれた
だから子を少しでも多く残せるものが頂点に立つのだと・・・


クイーン「だが、クイーンとは名ばかりで子を産み、逆賊を処罰すること以外何も我が種ために何もできない・・・私はそれが嫌で仕方ない。上に立つものとして我が種を守っていきたい・・・中々理解されないのだがな」

クレア「クイーン・・・」

クイーン「人に我らの考えなど理解できぬだろう。だが、これだけは分かってくれ。我らはずっと昔から守ってきた土地で静かに過ごしていたいだけ・・・」


もう開けることさえ出来ない目が
クレアにはとても寂しそうに見えた


クイーン「まぁ、たまにならず者もいる。この間の者のようにな。そういう者の処罰は私の役目だが、もし人に迷惑をかけているのであれば人の手で倒して構わん」

クレア「貴方達と渡り合う実力があるハンターがいたらね」


話をしているとディバアームが何かを察知した
誰かが近づいてきているらしい


クレア「・・・?一体誰が・・・?」

ディバアーム「足音から人のようだな、10人ほどいる」

クレア「もしかして調査隊?さっきの戦闘に気付いて来たの?」


するとクイーンがディバアームの体を支え動き出した


クイーン「人に姿を見られると面倒だ、私達はここで退散しよう。そなたの仲間ならそなたを助けれくれるだろうしな」

クレア「うん、私は大丈夫!今までありがとう。いつかお礼させてね」


どうやら助けられてばかりなのはクレアの性に合わないらしい
このまま別れるというのはクレア自身が許さないようだ


ディバアーム「そんなものはいらん。礼が欲しくて助けたわけではない」

クレア「でも・・・」

ディバアーム「・・・では、腹の子が生まれたら見せに来い」

クレア「・・・・え?」

ディバアーム「俺はまだ人の子を近くで見たことがないからな。見てみたい」

クイーン「それはいいな、私も見てみたい」


思わぬ要望だったがクレアは快く応じた


クレア「分かった、元気な子産むね!それまで死んじゃダメだよ!」

ディバアーム「ああ、楽しみに待っているぞ」

クイーン「そろそろ行くぞ、そなたの元気でな・・・」


2体は森の奥へと消えていった
それから少し経つと調査隊が到着した

息絶えたイビルジョーを見て動揺していたが
クレアの救出が先だとすぐに近くの村へ引き返した

クレアは約束を守り、ディバアームに会い助けられたことも
彼らが人語を喋ったこともクイーンのことも決して口にしなかった







◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇









Viewing all articles
Browse latest Browse all 694

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>