デュークモンの過去編になるので本編からおよそ3000年前の話です。
なので本編で登場するロイヤルナイツはオメガモンとアルフォースブイドラモンのみ、
あ、デュークモンもそうか
この時はギルモンだけど
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「と、いうことでアルフォースちゃん。協力してちょ♪」
「意味が分からん、早々に散れ」
二年にも渡る長期任務から帰ってきてすぐに面倒なヤツに声を掛けられた。
あー嫌だ、本当に嫌だ。
今すぐに逃げたいけどオメガモンも一緒にいるからオメガモンだけ残して俺だけ逃げるなんて出来ない。
オメガモンの脚だとスレイプモンの速度からは逃げられないからな。
そんなことしたらオメガモンがとばっちり受けるかもしれない。
オメガモンは俺とスレイプモンの仲が険悪なのを知っていて自然と俺とスレイプモンの間に入ってくれているから余計。
「総司令官。何か用事があるのでしたら詳しく話して下さらないと私でも意味が分かりません。しっかり最初から最後まで話して下さい」
どうしようか迷っていたところにオメガモンの助けが…
正直俺から声は掛けるのはお断りだったから助かった。
しかし心の底から早く終わらせたい願望が込み上げてくる。
スレイプモンに声を掛けられた時は大体ろくな事にしかならない。
「そうだな、お前ら二年も任務に行っていたんだし知るわけないもんな。実は今俺の軍にギルモンってデジモンがいるんだけど、ウィルス種の本能がめちゃくちゃ強くてほんの少し頭に血が上っただけで我を失うくらいなんだよ。だからお前の知恵が欲しいってワケ、協力してくれない?」
「は…はぁ…」
「更に意味が分からん。ウィルス種の本能が強いならウィルス種に訊けばいいだろう。俺に頼むのはお門違いってヤツだ」
「えーだってー竜の本当とウィルス種の本能って同じようなものだろ?何かいい方法を知っているんじゃないかと思ってね」
「……あ?」
その言葉を聞いてブチっと何かが切れる音がした。
誇り高き竜の力を殺戮兵器のようなウィルス種の本能を同じようなものだと…?
と、怒りで竜の本能を解放していたらしく、かなり禍々しいオーラが俺の背後で蠢く。
近くにいたオメガモンは今のスレイプモンの発言で俺がキレるんだろうなと思っていたのか、あまり動じていないようだけどスレイプモンは割と本気でビビっているっぽい。
スレイプモンとは一度大喧嘩したことがある。
400年前、自衛軍の入隊試験で面接をしている時たまたま俺は休日でチラッとその面接を覗きに行っていた。
理由は簡単、アキリの生まれ変わりを捜すため。
アキリは俺の息子だ。
と言っても本当の息子ではなく養子みたいなもので、2000年くらい前に時空嵐≪エターナルストーム≫というデジタルワールドと一番近い次元にある別世界、一応人間界と呼んでいるけどその二つの世界が一時的に繋がってしまう特殊な嵐のせいでデジタルワールドに流されてしまった人間の赤子。
その赤子を俺達”ロイヤルナイツ”が引き取ることになったんだ。
当時の俺ってのがまぁ最悪な人格しててなー…自分以外の存在は皆見下しているわ、命に重みもまるで感じていないわで冷酷非道という言葉がピッタリ合う性格だった。
上手く言い表せないが、アキリと触れ合えたお陰でまともになれた。
アキリと出会わなければ一生あのままだと思うと軽く寒気がするぜ。
俺が積極的に面倒見ていたんだけど、気が付けばアキリのことを我が子のように大切にしていた。
成長を楽しみにしてけど10歳の時に不治の病にかかってしまって…手を尽くしたけど2ヶ月もしないうちに亡くなってしまった。
任務だったとはいえ看取ってやれなかったことを今でも後悔している。
そしてアキリは死の間際に「デジモンに生まれ変わりたい」と言ってたそうだ。
だから生まれ変わって来てくれたその時はまた俺の傍に置いて、今度はあの当時まともに与えてあげられなかった愛情を沢山与えて育ててやろうと決めていた。
…決めていたんだけど、あの野郎それを小馬鹿にしやがった…
「2000年も経つのにまーだ捜してやがるのか、未練がましいヤツー。こんなに未練がましいんじゃアキリもたまったもんじゃないよなー、それが嫌で生まれ変わりたくないじゃないのか?…ぷふっ」
それを言われた瞬間、今まで我慢してきていたのも爆発して本気でスレイプモンを殺そうと刃を向けた。
丸1日は戦っていた。
俺は竜の本能を解放してかなり凶暴になっていて軽くバーサーカー状態。
スレイプモンも能力をフルに使って俺と戦っていたみたいで誰にも止められない戦闘になっていたらしい。
白帝城の周り、半径100kmは火の海になっていたな。
騒ぎを聞きつけた”オリンポス十二神”の主神ユピテルモンがなんとか止めてくれて、ひとまず収まった。
俺は俺でイグドラシルからの罰で100年地下牢に閉じ込められ、俺を挑発したスレイプモンはスレイプモンでイグドラシルからの罰はなかったようだが、代わりにユピテルモンとユノモン、オメガモンにこっぴどく説教されたそうだ。
地下牢から出てきてから聞いたけど、2日間説教が続いたらしい。
ある意味地下牢に閉じ込められるより悲惨かもしれない。
というか一回”ロイヤルナイツ”の掟を破るともう掟のこととかどうでもいいと思っている気がするのは気のせいだろうか…?
なんか罰くらっても大して気にしていないような感じがする…
「あー…すまん、謝る!今のは失言だった。だから怒るなって、お前の知恵借りたいのは本当だからさ」
「…だ、そうだアルフォース。とりあえず落ち着け」
「お、…おう…そうだな」
なんだ?珍しくスレイプモンの方から謝った。
それに驚いたのもあって自然と怒りが収まる。
もっと詳しく話を聞くと、もう2年も訓練をしているのに全く変化が見られないというし、ウィルス種の本能が強すぎて暴走が加速して自我さえ崩壊してしまうくらいに暴れてしまうことまであるらしい。
確かに異常だ、そこまでウィルス種の本能が強いヤツなんて聞いたことが無い。
「でも自分の意志はハッキリしている子なんだよ。なんとかしてやりたいんだけど俺じゃもうアドバイスが出来なくてさ~俺のためじゃなくてギルモンのためにちょっとでいいから協力してくれないかな?」
「…って言われても竜の本能とウィルス種の本能は根本的には違うものだから俺でもアドバイス出来ることほとんどないと思うけど…」
「それでもいいんだ!会ってくれるだけでもいいから、お願い!」
俺の目の前でかなりらしくない光景が広がっている。
スレイプモンがこんな風に頭を下げているなんて見たことがない。
ましてや普段ほとんど近付くことさえない俺に向かってなんて…
それにはオメガモンも驚いているようだった。
副司令官のオメガモンが見たことないんだったら他の誰も見たことがないのかもしれない。
「…分かったよ。力にはなれないだろうけど会うだけなら…」
「本当か!ありがとう!じゃあ早速会いに行こう!」
「え?今からか?報告書終わってないんだけど…」
「私がまとてめやっておくから行ってくるといい」
「本当に…?また倒れても知らねぇぞ」
「問題ない」
「「絶対に嘘だな」」
「……二人でハモらなくてもいいではないですか…」
なんかオメガモンが泣きそうな顔していたけど、まぁやってくれると言うのだから任せるか。
その後がかなり怖いけどな。
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ギルモンに会ってきた。
普段はスレイプモンの言った通りかなり大人しい、生真面目な性格のようだ。
しかし、些細なことでもウィルス種の本能に支配されて暴走してしまう。
これは想像していたよりも厄介かもしれない。
普段はこんなに大人しいのだから暴走して仮に友達を傷つけたなんてことになったら相当ショックを受けるに違いない。
生まれつきのものみたいだから俺に出来ることなんてやっぱりなさそうだけど、とりあえずアドバイスはしておいた。
それで上手くいくかはやってみないことには分からない。
白帝城に戻ってすぐにしたのはギルモンの苦労も知らずに勝手なことを言っていたというデジモンを全員探し出して解雇したこと。
なんか昔の自分みたいで嫌気がしたのでやった。
後悔?
するわけないだろ、俺は陰口が嫌いなんだよ。
お仕置きもかねて解雇する前に全員呼び出してちょっと脅してやった。
別に大したことはしていない。
一瞬だけ竜の本能解放しただけだ。
けどまだ成長期、よくて成熟期のデジモンには十分に効果がある。
竜の本能解放するのは主に”七大魔王”対峙する時だしな。
後日、ギルモンが訓練中に暴走することが減ったとスレイプモンから聞いた。
あるかどうか分からなかったけど効果があったみたいで良かった。
お礼だと言ってまた俺に抱きつこうとしたので最速で逃げてやった。
地面に頭ぶつけたみたいだけど知ったことではない。
こいつに触られると何をされるかまるで予想がつかないからな。
昔データ種のエネルギー注ぎ込まれた時は拒絶反応で三日三晩苦しんだ。
「ごめーん、エネルギー注ぎ込む量ちょっと間違えちゃった☆」
とか言ってたけどこっちはマジで死ぬかと思ったんだぞ!
…本当に勘弁して欲しい。
でもギルモンのことは知ってしまった以上、俺も気になるからたまに様子見に行ってやるか。
なんとか無事に究極体まで進化して欲しいが、後はギルモンの努力次第だ。
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